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後発薬の普及で収益が圧迫する製薬業界。今期の研究開発投資は?

8社中6社が前期比でプラスの見込み
 製薬主要8社の2017年3月期における研究開発費は、前期比2・9%減の1兆981億円となる見通しだ。為替が円高へ振れることで、海外の開発案件を多く抱える武田薬品工業第一三共の研究開発費が減ることが影響する。その他の6社は増加を見込んでおり、特に田辺三菱製薬と大正製薬ホールディングス(HD)の伸び率が大きい。後発薬の普及に伴って収益が圧迫される傾向が顕著になる中、各社は中長期の収益源を育成できるかが問われる。

 武田薬品の研究医開発費は17年3月期に同6・0%減の3250億円となる見込み。ただ為替影響が約200億円あり、それを除くと微増だとしている。多発性骨髄腫治療薬「イキサゾミブ(一般名)」の日米欧での第3相臨床試験に多く費用を投じるもよう。

 第一三共は為替に加え、「前年度にかさんだ後期開発品の費用が段々落ち着いてくる」(廣川和憲副社長)ことが減少要因となる。

 アステラス製薬は眼科領域や再生医療などで積極的な投資を見込む。これらの領域を強化する目的で16年2月にバイオベンチャーの米オカタを買収しており、同社の活動を軌道に乗せる意味もある。エーザイは米バイオジェンと共同で取り組んでいる次世代認知症薬の開発を加速する。

 田辺三菱製薬は糖尿病薬や神経系用剤、ワクチンについて開発進展を目指す。大正製薬HDは第2相臨床試験の段階にある関節リウマチ治療薬など3剤の開発に力を注ぐとともに、大衆薬分野でも新製品の創出を進める。
日刊工業新聞2016年5月19日面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
薬価の引き下げや後発薬の普及で、製薬各社の収益は年々圧迫される傾向にある。どこに強みを見いだすか、差別化するかが研究開発においても問われている。

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