スズキのブランドはどこまで傷つくか

「遠州のからっ風」は言い訳に過ぎない。ユーザーが感じる実車燃費や走行性能で決まる

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(左から)会見する鈴木修会長、鈴木俊宏社長
**燃費試験で規定外測定、偽装は否定
 スズキは18日、燃費試験に用いるデータを、国の規定である「惰行法」とは異なる方法で測定していたと発表した。対象は現在販売中の全16車種で、2010年ごろからタイヤの転がり抵抗やブレーキの引きずり抵抗を試験室内で測定し、風洞での空気抵抗などを合算した「走行抵抗値」を採用していた。鈴木修会長は国土交通省で記者会見し、燃費改ざんの意図を否定した上で「定められた測定方法を用いなかったことを深くおわびする」と陳謝した。

 対象は「アルト」など軽自動車8種、「ソリオ」など登録車8種の計16車種で、販売台数は計210万台を超える。走行抵抗値と惰行法による実測値の誤差は10%の範囲内で、燃費の誤差は5%未満であるとし、生産・販売を続ける。

 惰行法はテストコースを走行して測定する。だが相良テストコース(静岡県牧之原市)は海に近く、風などの影響を受けて測定結果がばらつくため、正確なデータを収集するには何回も測定する必要があった。開発期間が限られていたこともあり、走行抵抗値を採用してきた。

 鈴木俊宏社長は「燃費を上げようという意図はなかったと判断している」と強調。テストコースに防風壁を設置するなどして惰行法で測定できる環境を整える方針を示した。また鈴木会長は経営責任について「改善が第一。現時点ではコメントを控える」とした。

鈴木会長「販売は続ける」


 スズキの鈴木修会長による国土交通省での会見での主なやりとりは以下の通り。
 ―事態の受け止めは。
 鈴木会長 テストコースに防風壁を作ると言っているが、そういった設備投資に至らなかった点は反省している。組織の風通しを良くしないといけないと思った。

 ―関係者の処罰は。
 鈴木会長 まずは正常に測定することが第一だ。調査をした上で考える。善意や無知でやったのかもしれない。人情的に考えないといけない。

 ―対象車種は販売を続けますか。
 鈴木会長 燃費を再測定したが、ほとんどがカタログ値と変わらない。客に対して迷惑を掛けることはない。我々としては販売を続けさせていただく。

 ―燃費競争が背景にありますか。
 本田治副社長 競争は認識している。競争にどう立ち向かうかが重要だ。徒手空拳で競争に臨んでいるわけではない。軽量化や電動技術などで改善している。開発現場にプレッシャーをかけていることはない。

日刊工業新聞2016年5月19日

COMMENT

中西孝樹
ナカニシ自動車産業リサーチ
代表

スズキからこのようなニュースが出てくることは非常に残念である。燃費不正が目的ではないようであり、販売や業績への影響は限定的となりそう。そうはいっても、2010年からの国内販売の16全モデルでのべ210万台に影響が及ぶ大規模な違反事例であり、スズキは猛省が必要だ。「遠州のからっ風」で走行抵抗測定が上手くいかなかったとは言い訳に過ぎない。スズキの信頼がどこまで傷つくか、それはユーザーが感じる実車の燃費や走行性能が本物かどうかで決まっていくだろう。軽量化プラットホーム、新型エンジン、エネチャージなどの新技術を積極的に導入してきたことに、スズキの燃費性能は裏付けされていると考える。

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