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クレドールの“顔”、文字盤に命を吹き込む彫金師

セイコーインスツルの照井清さん。「刃物は今もデザインに合わせて自作」
クレドールの“顔”、文字盤に命を吹き込む彫金師

彫金加工する照井さん

 艶やかなデザインが腕時計ファンを魅了するセイコーの高級腕時計ブランド「クレドール」。繊細かつ大胆な技でその価値を高めているのが、セイコーインスツル(千葉市美浜区)で彫金師として活躍する照井清さんだ。

 かつて彫金加工を得意としていなかったセイコーにあって、飽くなき探究心で道を切り開いてきた。その功績が認められ、2007年には黄綬褒章を受章。新たなデザインを生み出すべく、今も着々と進化を遂げている。

 クレドールの“顔”ともいえる文字盤部分。そこに装飾を施し生命を吹き込むのが、彫金師の役目だ。製品一つひとつ、作業はまさしく真剣勝負。幅0・4ミリメートル前後、深さ最大0・15ミリメートルの極細線を彫り、慎重に模様を描いていく。このため、「1部品で1週間半、時計1個分だと1カ月半以上はかかってしまう」と照井さんは苦笑いする。

 彫金担当となったのは、90年代半ばのことだ。彫金時計の投入を決めたセイコーだが、課題は加工の担い手不足。長年クレドールのケース製造を担ってきた照井さんに、白羽の矢が立った。

 「当時セイコーに彫金の歴史はなかった。後発でスイス時計に対抗するには、同じことをやってはダメ。どんどん新しいことに挑戦した」と照井さんは振り返る。

 例えば金属を削る刃物類。通常、市販の刃物が使われるが照井さんはあえて手に取らなかった。「刃物は今もデザインに合わせて自作している。市販品より明らかに良い加工ができる」。

 セイコーが究極の工芸時計として今春投入した「フガク」には、照井さんの技が凝縮されている。「波を立体的に表現したデザインは、今までなかったもの。ぜひ手にとってよく見てほしい」とほほ笑む。
(文=藤崎竜介)

「フガクGBCC999」
※日刊工業新聞で「マイスターに聞く」を連載中
日刊工業新聞2016年5月18日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
13日から限定発売された「フガク」は「富嶽三十六景」からインスピレーションされたもので、セイコーが誇る3人の現代の名工と、日本の伝統工芸である漆芸を融合させた究極の工芸時計。限定8本で希望小売価格は5000万円!

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