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パワー半導体の温度影響をきっちり測定するクオルテックの試験装置

パナソニックOBが事業化をリード
パワー半導体の温度影響をきっちり測定するクオルテックの試験装置

SiCなど多様な素材の半導体内部を測定

 電気の直流・交流や昇降圧、周波数変換を制御するパワー半導体は、電子製品の高機能化、省エネルギーのカギを握る技術として脚光を浴びる。しかし、炎天下など過酷な環境でも作動するかを調べる耐久試験が難しく、開発のネックとなっている。クオルテック(堺市堺区、志方廣一社長)は4月、車載用パワー半導体を高い信頼性と効率で試験できる「パワーサイクル試験装置」を製品化した。顧客の難題を解決し、成長を図ろうとしている。専務執行役の水上俊彦氏に聞いた。

(クオルテック専務執行役・水上俊彦氏)

 ―パワーサイクル試験装置とは、どのような製品ですか。
 「パワー半導体でも、特に車載用は大きな電流、電圧、高温にさらされても動作する高い信頼性が求められる。そのような耐久試験を行うパワーサイクル試験装置『パワーステーションPS101』を発売した。半導体が壊れる原因を正確に効率よく突き止め、耐久性に優れるパワー半導体の開発に役立つ」

 ―これまでにはない装置なのですか。
 「一般のパワーサイクル試験装置は、パワー半導体の外部で温度を測るので、誤差が生じる。半導体が高熱で黒焦げになった後に、壊れた原因を調べるのも難しい。このため半導体メーカーは破壊が起きる初期試験を何度も繰り返し、設計や開発に多大なコストと時間をかけている」

 ―他社製と比べ、パワーステーションPS101の優位性は。
 「パワー半導体の特性を利用して、炭化ケイ素(SiC)など多様な素材による半導体内部の温度を、センサーなしでリアルタイムに測定する技術を採用した。これによって、半導体がどこの箇所から何度の温度で壊れ始めたかをはじめ、破壊の過程を正解に解析できる。原因を明確に特定できるので、半導体の開発期間を従来の半年、1年から、1―3カ月に短縮できる」

 ―製品化できた要因と、受注の実績は。
 「もともと電子機器の故障解析や信頼性試験を本業とし、自動車の半導体メーカーから新たな試験の要望をいち早く聞けた。『すぐにできる』と即答し、試験事業のノウハウを生かしたほか、機器とソフトウエアの開発力も総動員し、わずか2カ月で完成した。顧客にはすでに1台納入し、今年末までには他社へもさらに数台納める」

【チェックポイント/試験事業依存脱却見据えて】
 実際に手がけているパワーサイクル試験の積み重ねを、パワーステーションPS101の開発に生かした。装置の制御方法ではパワー半導体の方式ごとに、100種類以上も生み出した。事業化を一貫してリードしたのは、パナソニック出身で半導体製品の開発に精通している水上氏。経営陣も開発に必要な設備を一挙に導入するなど、迅速な集中投資を行い、ベンチャー精神を発揮した。試験事業だけに依存しないメーカーへの発展を見据える。
(聞き手=田井茂)
日刊工業新聞2016年5月17日面
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
往年の輝きを失ってから久しい日本の半導体業界だが、パワー半導体などで日本勢の復活も一部で見られるようになってきた。それを支えるには半導体メーカーだけでなく、産業を支える幅広い業界の力も不可欠だ。かつて日の丸半導体を引っ張ってきた技術者たちの力をどう生かしていけるかが、その成否を分けるだろう。

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