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巨人GEに対抗!発電所や石油精製プラントを支えるセンサーメーカーが広島にあった!

IoT時代に注目を集めそうな新川電機の変位・振動センサー
巨人GEに対抗!発電所や石油精製プラントを支えるセンサーメーカーが広島にあった!

新川センサテクノロジ広島工場。センサーのデータを集めるモニター機器の生産工程

 モノのインターネット(IoT)やビッグデータといった最新の情報技術をテコに、製造業からサービス業への業態転換を進めてきた米ゼネラル・エレクトリック(GE)。モノの売り切りという従来の姿を脱却し、点検や修理までを含めてトータルでパッケージ化し、サービスとして顧客に提供する。そこに最新ITを組み合わせてサービスを効率化・最適化し、さらには次の商談につなげようというビジネスだ。GEの高収益を支える業態として、日本の企業からも注目を集めている。その核には、航空機エンジンや発電用タービン、先端医療機器といった「強い」製品群がある。

 広島県東広島市の吉川工業団地。周りをなだらかな丘陵と田んぼに囲まれ、かつての日の丸半導体を背負ったマイクロンメモリジャパン(旧エルピーダメモリ)の広島工場も立地する、地方の工業団地だ。ここに、その巨人GEに挑もうとするセンサーメーカーがある。新川センサテクノロジ(本社東京都千代田区、新川文登社長)の広島工場。発電所の主機であるガスタービンや蒸気タービンの回転軸の振動や位置ずれを、非接触・高精度で測定するセンサー(変位・振動センサー)では、国内唯一のメーカーだという。

 同社が作るセンサーは、タービン以外にもコンプレッサーやモーターなどの回転機械の軸に接近して設置される。センサーの検出部にはコイルが巻いてあり、そこに生じる渦電流の大きさを検知し、検出対象となる回転軸との距離を非接触で測定する。検出精度はマイクロメートル単位。微少な時間ごとに位置のズレを測定すれば、振動も測れる。発電所であれば、一つのタービンに40個程度の変位振動センサーが使われるという。

 同社はもともと、計測機などを扱ってきた商社、新川電機(広島市中区、新川文登社長、082・247・4211)の製造部門が1994年に分社化して誕生した。センサーの開発は、広島地区の重工業メーカーのニーズを受けて70年代にスタート。材料特性の研究のため、伝手を頼って東北大学の門を叩くなど苦労を重ね、80年代初頭に商品化にこぎ着けた。

 発売当初は、監視対象の機械に異常が起こった場合に警報を出す使い方が中心だった。その後予防保全の考え方が主流になるにつれ、通常稼働時から振動を検出、記録しておき、停止に至る前に異常の兆候を検知する「状態監視」の用途が広がった。98年にはパソコンで動く状態監視システムを発売。「CMS(=コンディション・モニタリング・システム)」の名称で、センサーとシステム、トータルで普及を進めた。今では同社のセンサーは、国内のすべてのタービンメーカーに使われている。

 同社にとっての最大の競合が、巨人GEだ。ベントリー・ネバダという米国の変位・振動センサーのメーカーを、02年にGEが買収。今はベントリー・ネバダはGE製品の1ブランドとなっている。発電タービンにおけるGEのシェアの高さを反映し、6070%と圧倒的な世界シェアを誇る。

 これに対して新川電機の世界シェアは6%前後。日本のタービンメーカーも、海外の顧客向けにはGE製のセンサーとシステムを組み合わせて出荷せざるを得ない状況がある。こうした状況を打破するには、最終顧客への売り込みが不可欠。新川電機は昨年末、サウジアラビアの国営石油公社サウジアラムコから認証を取得。サウジの石油精製プラントの回転機械では、新川のセンサーとシステムを使ってもいいとお墨付きを得たことになる。

 このセンサーとシステムが主に使われるのは発電所や石油精製、石油化学といった業界。近年、国内の工場では設備の老朽化に加え、熟練従業員の退職も進んでいる。新川文登社長は「プラント全体の信頼性を上げるため、タービンのような主機だけでなくモーターなど周辺機器へも採用が広がる傾向がある」と話す。化学プラントでは2500から3000台にのぼる回転機械が動いていると言われる。監視システムがついていない小さな付属機械では、担当者が毎日巡回して稼働状態をチェックするするのが日課になっている。コスト対効果を考えると、こうした小さな機械にも監視システムが普及できる余地は十分ある。

 さらに今後は、IoTや、それを使ったドイツ発の製造業革命「インダストリー4・0」が描く将来像を実現する上では、センサー技術がカギの一つを握る。GEにも対抗できる日本発のセンサー技術として、同社の動向は今後注目を集めていきそうだ。
ニュースイッチオリジナル
清水信彦
清水信彦 Shimizu Nobuhiko 福山支局 支局長
GEが強いのは、この記事に出て来るベントリーのセンサーのようなコア技術を内部に持っていることもあると思う。新川電機は日立、三菱、東芝、いずれのメーカー系にも属さない独立系企業。その立場をフルに生かして、今後も日本発IoT革命を支えていって欲しいと思います。

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