スマホメーカーは儲からない?京セラは生活習慣病予防サービスに期待
内田洋行健康保険組合が本格採用
2015年1月にデモバージョンを借り受けてから1年あまり。内田洋行健康保険組合の中家良夫事務長の体重は72キログラムから65キログラムへと減り、リバウンドもないという。「営業現場にいた4年前までは、健康管理なんて考えたこともなかった」と苦笑いする。
京セラが昨秋から事業展開する生活習慣改善支援サービス「デイリーサポート」。内田洋行健康保険組合では同年11月に本採用した。約500人が利用を申し出たが、スマートフォンの対応機種を持つ約300人がまず使い始めた。
同サービスは日本予防医学協会と協業でスタート。活動量を計測するウエアラブルデバイス「TUSC」とスマホを組み合わせて、健康に関するデータをウェブ上で分析、見える化するサービスで、個々の利用者に応じた生活の改善策を促し、生活習慣病を予防しようというものだ。
スマホで撮影した食事写真から大まかなカロリーを測定したり、スマホでウエストをなぞるだけで内臓脂肪を測定したりできる。スマホを枕元に置いて寝れば、眠りの質や睡眠時間も測定する。
まず企業の健康保険組合へ売り込み、将来はフィットネスクラブや薬局などによる顧客サービスもターゲットとする。
(TUSCを胸ポケットにつける、内田洋行健康保険組合の中家良夫事務長)
京セラはスマホメーカーであり、同サービスはスマホを手がける通信機器事業本部が展開する。ただ専用アプリは「アンドロイド」「iPhone」に広く対応し、自社スマホを拡販するツールではない。
あくまでサービスが主体だ。「市場の飽和が進む中でアップルやサムスンといった超大手に中国メーカーが加わり、この先どうなるのだろうか」(通信機器事業本部通信機器経営戦略部の内藤昌宏新事業推進部部責任者)という、端末ビジネスへの危機感から構想が立ち上がった。
このサービスの最大の特徴は、「運動と食事、睡眠という日常生活で気をつけなければならないことをワンセットにした」(同)こと。内臓脂肪の測定では、日本予防医学協会の協力を得て、実際に300人以上からCTスキャンのデータを集め、腹部の形から内臓脂肪を推定するアルゴリズムをつくり上げた。
京セラにとっての収入は、活動量を測定するために身につけるTUSCという端末と、月額のサービス料金。社内からは「自社スマホにアプリを入れて売ることを求められた」(同)が、あえてサービスに徹する。
それにより通信事業者にぶら下がる従来型の端末ビジネスからの脱却を狙った。現在の利用者は内田洋行を含めて1000人近く。「道のりは遠いが、国民全体に使ってもらいたい。まずは5年後に100万人が目標」と内藤部責任者は期待を込める。
ICTを活用した新たなサービス事業が、スマホや電子部品といった従来のハード事業とどのような相乗効果を生み出すのか。デイリーサポートの成否が今後の試金石となる。
(文=尾本憲由)
京セラが昨秋から事業展開する生活習慣改善支援サービス「デイリーサポート」。内田洋行健康保険組合では同年11月に本採用した。約500人が利用を申し出たが、スマートフォンの対応機種を持つ約300人がまず使い始めた。
同サービスは日本予防医学協会と協業でスタート。活動量を計測するウエアラブルデバイス「TUSC」とスマホを組み合わせて、健康に関するデータをウェブ上で分析、見える化するサービスで、個々の利用者に応じた生活の改善策を促し、生活習慣病を予防しようというものだ。
スマホで撮影した食事写真から大まかなカロリーを測定したり、スマホでウエストをなぞるだけで内臓脂肪を測定したりできる。スマホを枕元に置いて寝れば、眠りの質や睡眠時間も測定する。
まず企業の健康保険組合へ売り込み、将来はフィットネスクラブや薬局などによる顧客サービスもターゲットとする。
(TUSCを胸ポケットにつける、内田洋行健康保険組合の中家良夫事務長)
端末ビジネスへの危機感から
京セラはスマホメーカーであり、同サービスはスマホを手がける通信機器事業本部が展開する。ただ専用アプリは「アンドロイド」「iPhone」に広く対応し、自社スマホを拡販するツールではない。
あくまでサービスが主体だ。「市場の飽和が進む中でアップルやサムスンといった超大手に中国メーカーが加わり、この先どうなるのだろうか」(通信機器事業本部通信機器経営戦略部の内藤昌宏新事業推進部部責任者)という、端末ビジネスへの危機感から構想が立ち上がった。
CTスキャンのデータで内臓脂肪を推定するアルゴリズム
このサービスの最大の特徴は、「運動と食事、睡眠という日常生活で気をつけなければならないことをワンセットにした」(同)こと。内臓脂肪の測定では、日本予防医学協会の協力を得て、実際に300人以上からCTスキャンのデータを集め、腹部の形から内臓脂肪を推定するアルゴリズムをつくり上げた。
京セラにとっての収入は、活動量を測定するために身につけるTUSCという端末と、月額のサービス料金。社内からは「自社スマホにアプリを入れて売ることを求められた」(同)が、あえてサービスに徹する。
それにより通信事業者にぶら下がる従来型の端末ビジネスからの脱却を狙った。現在の利用者は内田洋行を含めて1000人近く。「道のりは遠いが、国民全体に使ってもらいたい。まずは5年後に100万人が目標」と内藤部責任者は期待を込める。
ICTを活用した新たなサービス事業が、スマホや電子部品といった従来のハード事業とどのような相乗効果を生み出すのか。デイリーサポートの成否が今後の試金石となる。
(文=尾本憲由)
日刊工業新聞電子版2016年5月13日 モノづくり