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反対少ない?30年に26%減

温室効果ガスの削減目標案
 30日、日本の温室効果ガス排出量の削減目標の政府案が示されました。新たな目標は30年に13年比26%減です。
 09年、鳩山首相が国連演説で20年までに90年比25%削減する目標を発表しました。当時は政治主導のトップダウンで決めたため産業界から反発が強かった記憶があります。今回の26%減は有識者会議を7回開き、しかもエネルギーミックス(電源構成)の議論とも並行しながらボトムアップで決めました。反対の声があがらないのは決め方の問題でしょうか(なぜか、民主党政権当時の方が目標決定プロセスへの国民的関心が高かったですが)

 今回の「26%減」のうちの25%の削減分が家庭や工場、ビルでの電力やガスの消費で発生するCO2です。「エネルギー起源CO2」と呼ばれ、企業などが「CO2削減活動」という表現をする時に対象となるCO2です。
30年まで15年あるので単純に考えれば年1-2%ずつ削減していけば30年目標は達成できます。そう考えると実現可能な目標と言えそうです。

 25%減の目標設定のベースとなったのが28日公表のエネルギーミックス案です。少ないCO2排出量で作られた電力が届けば、家庭やビル、工場は電力使用量にかかわらずエネルギー起源CO2が減ります。もちろん再生エネや原発がCO2排出の少ない電源です。

 そもそもエネルギーミックス案は省エネ17%があって成り立っています。説明が難しいですが、30年の想定電力需要=「再生エネ・原発・火力」プラス「省エネ量」です。
省エネの17%がないとエネルギーミックスで示した電源よりも多くの電源が必要となる計算です。
 極端に、そして乱暴にまとめると、30年の温室効果ガス削減目標達成のため国民には17%の省エネが求められたようなものです。(エネルギーミックス案通りの電源構成になる、電力需要が増加する、などの条件がありますが)

 いまの生活に当てはめてみると17%が厳しいかどうかが想像できると思います。夜6時間、テレビを見て照明をつけていたとしたら、その時間を1時間以上削ることになります。

 もちろん最新の製品を導入すれば生活を変えずに省エネができます。目標の政府案には多くの省エネメニューが例示されました。普及が期待される燃料電池車、エネルギーマネジメントシステムなど新技術が盛り込まれており、需要を創出しそうです。ただし導入にはコストもかかります。その想定コストは示されませんでした。

 エネルギーミックス案では太陽光、風力はコスト高という理由で比率が抑えられました。省エネも投資コストが気がかりです。省エネのコストも示してほしいです。
ニュースイッチオリジナル
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
エネルギーミックスの政府案に続き、温室効果ガスの排出削減案が示されました。反対意見が出てこないと、なかなか議論が深まらないと思います。

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