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<三菱自不正>岡山現地ルポ。「他社との合併を検討する企業があると聞いた」

水島製作所の下請けにあきらめムードも。公的支援には市民の理解が必要
<三菱自不正>岡山現地ルポ。「他社との合併を検討する企業があると聞いた」

不正問題の影響で中小は苦境に(水島製作所の正門)

 三菱自動車の燃費不正問題で、取引先の岡山県の企業が苦境に陥っている。水島製作所(岡山県倉敷市)は問題発覚後、軽自動車の生産を停止。三菱自に納入するサプライヤーの多くも工場の稼働を止め、従業員の一部を自宅待機させている。経済産業省や地元自治体も支援に動くが、問題は長期化するとみられ、経営への打撃は必至だ。

 三菱自の協力会社が入居する岡山県総社市内の工業団地。ゴールデンウイークが明け、通常業務が始まった9日になっても敷地内に人は見当たらず、数台のトラックが行き交うのみだ。協力企業の外壁に飾られた三菱自のパートナー企業であることを示すスリーダイヤのマークが入った看板が、どしゃぶりの雨でぬれていた。

「三菱自から全く情報が入ってこない」


 「三菱自から全く情報が入ってこない。一部の人間の不始末でこんなことになるなんて」。軽自動車用部品の生産ラインを止めている協力会社の従業員は伏し目がちに語った。別の部品会社社員は「(リコール隠しなど)過去に何度も問題を起こしている。懲りない会社だと思った」とあきらめの表情を浮かべた。

 燃費不正問題発生後、水島製作所の幹部が工業団地を訪れ、部品メーカーに現状を説明したという。ただ「(幹部は)質問に対し『まだ分からない』と繰り返し答えていた。本当に本社から情報が入っていないように見えた」と出席した関係者は語る。

 岡山県内には三菱自の一次、二次仕入れ先合計で509社(帝国データバンク調べ)ある。2002年に三菱自がサプライヤーの協力会「三菱自動車柏会」を解散後、一部の企業は三菱自以外の車メーカー向けの取引を広げた。

 しかし、依然として全社売上高に占める三菱自向け割合が5割以上の会社が多く、8割超の企業もある。三菱自のサプライヤーで構成する協同組合「ウイングバレイ」理事の水松幹夫アステア(岡山県総社市)会長は「我々が手がけるボディー部品製造はメーカーに近い場所でやる仕事。水島製作所向けの比率がどうしても高い」とし、一日も早い再開を要望する。

 「他社との合併を検討する企業があると聞いた」(三菱自と取引のある企業の担当者)。問題が長期化すれば各社の経営に大きな打撃になる。

(軽以外の不正も疑いが。11日に会見した三菱自の相川社長<左>と益子会長)

自治体、支援に全力


 三菱自動車による燃費不正問題で、岡山県や金融機関などが三菱自と取引する自動車部品メーカーの支援に追われている。水島製作所(岡山県倉敷市)が軽自動車の生産ラインを停止しており部品メーカーの経営悪化が避けられないからだ。自治体は相談窓口の開設や金融支援により、倒産防止や従業員の雇用維持につなげたい考え。ただ不正問題は長期化する様相で、追加支援策の内容を模索している。

 「資金繰りや仕事のあっせんに関する相談が相次いだほか、『三菱自から情報がなかなか入ってこない』とする企業の声があり、早急な対応が必要だった」(岡山県の担当者)。

  岡山県は工場の稼働停止や従業員を自宅待機させている地元企業が多いことを踏まえ、2日から新たな融資制度の取り扱いをはじめ、事業活動に影響が出ている企業が低金利で融資を受けられるようにした。

 同総社市は最大1億円の金融支援を実施する方針で、ヒアリング調査で企業の現状を把握した上で支援制度の詳細を詰める。中国銀行は金融支援のほか三菱自関連の顧客をサポートする専門チームを発足するなど地域金融機関も支援に乗り出した。

 自治体や金融機関がサプライヤーの支援を急ぐのは、県内経済への打撃が大きいため。岡山県の調査では水島製作所の取引企業は1次下請け先の部品関連工場だけで34社。同製作所、構内協力会社、1次下請けを合わせ県内で1万4140人を雇用しているという。

「リーマン・ショックの時よりも深刻」



 現時点で水島製作所の軽自動車の生産再開のめどは立っていない。三菱自の相川哲郎社長兼最高執行責任者は「少なくとも2―3カ月以上はかかる」との見解を示している。ある自治体関係者は「08年のリーマン・ショックよりも県内自動車産業へのマイナスの影響は深刻だ」と問題の長期化を懸念する。

 このため自治体は部品各社へのヒアリングを続け、状況によっては追加の支援策を検討する考え。県は「具体的な内容は決まっていないが助成金の申請要件緩和や販路開拓支援などが考えられる」(岡山県経営支援課の担当者)とする。

 一方で、支援側の本音は複雑だ。ある自治体幹部は「これまで三菱自にはいろいろ協力してきたけど、正直3度目の失敗はありえない」と漏らす。別の幹部は「リーマン・ショックの時とは違って『下請けも三菱自と一心同体だ』とみなし、公的支援を良く思わない市民もいる。市民にしっかり説明し、支援内容も慎重に決めていかないと」と頭を抱える。
(文=下氏香菜子)

(生産再開を石井国交相に要望する伊原木岡山県知事)

「基幹産業に大変な悪影響が起きている」(岡山県知事)


 三菱自動車の燃費不正問題で、伊原木隆太岡山県知事らが11日、石井啓一国土交通相らと面会し、三菱自動車の水島製作所(岡山県倉敷市)での軽自動車の生産停止に関し、早期再開に向けた配慮を要望した。伊原木知事は「再開の見通しが立つか立たないかで対応も違ってくる。ご協力とご理解をお願いしたい」と述べ、生産再開への手続き迅速化を求めた。石井国交相は「地域経済に大きな影響を与えていることは承知している」と応じ、三菱自動車に早期の全容解明と責任の明確化を促す考えを示した。

 岡山県によると、水島製作所では約4700人が働き、県内の直接取引企業の工場の従業員を合わせると約1万4000人にのぼる。「県にとって自動車は基幹産業だ。(生産停止で)大変な悪影響が起きている」(伊原木知事)と訴えた。

 伊原木知事は北村経夫経済産業大臣政務官や豊永厚志中小企業庁長官に対しても、「セーフティネット保証制度」の適用を求めた。経産省は12日と13日に職員を派遣して実態を調査し、結果を踏まえて速やかに実施する。北村大臣政務官は「中小企業や取引先の対応に万全を期する」と述べた。制度の適用で金融機関から融資を受ける際の保証限度額が通常の2倍に増え、お金が借りやすくなる。

 県は同製作所の生産停止で影響を受ける県内の中小・零細企業を支援するために相談窓口や融資制度を新設。5月中に岡山労働局・ハローワークなどと、支援制度の説明や個別相談に応じる説明・相談会を開く。
日刊工業新聞2016年5月11日/12日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
一部に日産が出資という報道が出ているが、水島製作所のことだけでもそれがよいシナリオ。

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