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造船・重機大手、今期業績予想から見えてくる新事業への期待

前期はプロジェクト管理の甘さが露呈。成長軌道を取り戻せるか
 造船・重機5社の2017年3月期連結業績見通しがまとまり、4社が当期増益の予想となった。前期はプロジェクト管理の甘さなどが露呈し、三菱重工業川崎重工業IHI、三井造船が特別損失を計上。当期利益は軒並み低水準で着地した。収益体質の改善が各社共通の課題として浮き彫りになる中、リスク管理体制の強化や収益性の高い新規事業の拡大をテコに再び成長軌道を描く。

 海洋構造物の生産混乱などが原因で、前期に3度の下方修正をしたIHI。「企業体質の改革と収益基盤の強化」(満岡次郎社長)が焦眉(しょうび)の急となっている。満岡社長は解決策として、プロジェクト受注の検討段階から要求技術や契約条件を審査する”目利き力“の強化を示した。

 大型客船建造で受注額を大幅に上回る損失を出した三菱重工も、最高経営責任者(CEO)直轄のリスク対応組織を新設したほか、緊急時に備えた財務余力の増強を掲げる。17年3月期も、500億円の事業構造改革費用を織り込み済み。宮永俊一社長は「重大リスクはほぼ終息しつつある」と話す。

 収益性の向上には、高付加価値事業の創出も強力な武器となる。各社のキーワードとなっているのが「ICT(情報通信技術)」だ。川重は自社の技術や製品を組み合わせ、IoT(モノのインターネット)を活用したスマートファクトリー(つながる工場)などを新機軸に位置づける。

 三菱重工もセンサー技術や監視・制御、予測(診断)技術を核として、製品・技術の高付加価値化を目指す。情報の送受信やデータ蓄積・処理などでは、積極的に他社技術を活用。IoTや人工知能(AI)などを絡めて、O&M(運転・管理)ビジネスの拡大を狙う。

 いずれにしても、新規事業が利益貢献してくるには、しばらく時間がかかる。足元ではコーポレート主導で、リスク管理や財務基盤の強化、リソースの最適化を進めることが特効薬となるだろう。
(文=長塚崇寛)
長塚崇寛
長塚崇寛 Nagatsuka Takahiro 編集局ニュースセンター デスク
多種多様な製品・技術を持つ造船・重機各社は、経営資源を有機的に結びつけ新たなイノベーションを創出するコングロマリットプレミアムを志向する。大きな損失を出した今こそ、変革の好機となるだろう。歴史ある重厚長大産業と技術革新の著しい情報通信技術のシナジーに期待したい

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