化粧品メーカーがデジタルプロモーションに力を入れる理由
ブランド・製品の世界観を演出
化粧品メーカーの間に、デジタル手法を用いた新しいプロモーションが広がっている。資生堂やコーセー、日本ロレアルは建物や空間に映像を映すプロジェクションマッピングや、デジタルサイネージ(電子看板)を使った売り場やイベントを設置した。人の動きと映像が連動するなど表現力に富んだ手法は、ブランドや製品が持つ世界観を自在に演出できる。情緒的価値が大きい化粧品ならではのプロモーションで消費者の関心を引き、顧客獲得につなげたい考えだ。
大阪・天王寺駅のそばに位置する「あべのハルカス近鉄本店」(大阪市天王寺区)。コーセーは4月、化粧品フロアにスキンケアブランド「雪肌精」で初となる化粧品カウンターを設置した。木材や和紙を使った和風のカウンターは、新国立競技場を手がける建築家の隈研吾氏のデザイン。通常は静止画の電光パネルが主流だが、デジタルサイネージも配置した。
デジタルサイネージは、平面ディスプレーに映像や情報を表示する広告手法。隈氏のアドバイスで「目を引くために、3台を縦に並べて縦長にし、同じ動画が流れる仕組みにした」(コーセー)。縦に長い形状は、古来より掛け軸などに用いられ“和”を表すという。
3月に都内で開いた雪肌精のイベントでは、プロジェクションマッピングで映像を水面に投映し、幻想的な空間を演出した。プロジェクションマッピングは、映像コンテンツを建物などの立体面にプロジェクターで投影する映像手法。
同イベントでは、素足で水中に入ると和漢の薬草や花の映像が体の動きに合わせてゆらゆらと変化する。6日間で約5000人が体験した。小林一俊社長は、同ブランドの売上高を「20年までに500億円を目指す」と意気込む。
(「資生堂ザ・ギンザ」エレベーターホールに投影したプロジェクションマッピング)
「デジタル世代の20―30代を取り込んでいきたい」と話すのは、資生堂の岡部義昭執行役員。百貨店の化粧品イベントで、指で触れると映像が自在に動き出すデジタルサイネージを設置した。タッチ操作に反応して、美容情報や花の映像が表示されるなど、若い世代が楽しめる工夫を加えた。
誘客に成功したのは、訪日外国人旅行者(インバウンド)でにぎわう同社の「資生堂ザ・ギンザ」(東京都中央区)だ。化粧品を販売する1階のエレベーターホールにプロジェクションマッピングを投影し、エレベーターの開閉と連動して花や光の映像が変化する仕掛にした。設置前は顧客がエレベーターに気づかず、買い物が1階だけで完結していた。だが、設置後は「(エステサロンなどがある)上の階を知ってもらうきっかけになった」(美容部員の豊田みや子氏)と話す。
(「ランコム」が設置した装置「肌キスマシーン」でファンデーションをPR)
仏ロレアルの日本法人である日本ロレアル(東京都新宿区、ジェローム・ブリュア社長、03・6911・8151)は、化粧品ブランド「ランコム」のイベント会場にデジタル装置を設置し、来客者がスマートフォンで撮影した写真をソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で投稿すると、会場で写真をプリントして持ち帰ることができる仕掛にした。
このようなデジタルコンテンツやクーポン、2次元コードなどを融合して実店舗での購入につなげるオンラインツーオフライン(OツーO)マーケティングは、話題の発信力が高く拡販の大きな武器になる。
各社がデジタルプロモーションに力を入れる背景には、飽和状態の化粧品市場で、不特定多数にコマーシャルを大量に流す画一的なマスマーケティングによる顧客開拓が難しくなっているためだ。
コーセーの外尾秀人執行役員は「昨今のお客さまの情報取得形態は日々変化している」と指摘する。インタラクティブな要素を加えて話題を集め、ブランド力強化や売り上げ増につなげる。
(文=山下絵梨)
幻想空間を演出
大阪・天王寺駅のそばに位置する「あべのハルカス近鉄本店」(大阪市天王寺区)。コーセーは4月、化粧品フロアにスキンケアブランド「雪肌精」で初となる化粧品カウンターを設置した。木材や和紙を使った和風のカウンターは、新国立競技場を手がける建築家の隈研吾氏のデザイン。通常は静止画の電光パネルが主流だが、デジタルサイネージも配置した。
デジタルサイネージは、平面ディスプレーに映像や情報を表示する広告手法。隈氏のアドバイスで「目を引くために、3台を縦に並べて縦長にし、同じ動画が流れる仕組みにした」(コーセー)。縦に長い形状は、古来より掛け軸などに用いられ“和”を表すという。
3月に都内で開いた雪肌精のイベントでは、プロジェクションマッピングで映像を水面に投映し、幻想的な空間を演出した。プロジェクションマッピングは、映像コンテンツを建物などの立体面にプロジェクターで投影する映像手法。
同イベントでは、素足で水中に入ると和漢の薬草や花の映像が体の動きに合わせてゆらゆらと変化する。6日間で約5000人が体験した。小林一俊社長は、同ブランドの売上高を「20年までに500億円を目指す」と意気込む。
(「資生堂ザ・ギンザ」エレベーターホールに投影したプロジェクションマッピング)
20―30代狙い
「デジタル世代の20―30代を取り込んでいきたい」と話すのは、資生堂の岡部義昭執行役員。百貨店の化粧品イベントで、指で触れると映像が自在に動き出すデジタルサイネージを設置した。タッチ操作に反応して、美容情報や花の映像が表示されるなど、若い世代が楽しめる工夫を加えた。
誘客に成功したのは、訪日外国人旅行者(インバウンド)でにぎわう同社の「資生堂ザ・ギンザ」(東京都中央区)だ。化粧品を販売する1階のエレベーターホールにプロジェクションマッピングを投影し、エレベーターの開閉と連動して花や光の映像が変化する仕掛にした。設置前は顧客がエレベーターに気づかず、買い物が1階だけで完結していた。だが、設置後は「(エステサロンなどがある)上の階を知ってもらうきっかけになった」(美容部員の豊田みや子氏)と話す。
(「ランコム」が設置した装置「肌キスマシーン」でファンデーションをPR)
OツーO武器に
仏ロレアルの日本法人である日本ロレアル(東京都新宿区、ジェローム・ブリュア社長、03・6911・8151)は、化粧品ブランド「ランコム」のイベント会場にデジタル装置を設置し、来客者がスマートフォンで撮影した写真をソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で投稿すると、会場で写真をプリントして持ち帰ることができる仕掛にした。
このようなデジタルコンテンツやクーポン、2次元コードなどを融合して実店舗での購入につなげるオンラインツーオフライン(OツーO)マーケティングは、話題の発信力が高く拡販の大きな武器になる。
各社がデジタルプロモーションに力を入れる背景には、飽和状態の化粧品市場で、不特定多数にコマーシャルを大量に流す画一的なマスマーケティングによる顧客開拓が難しくなっているためだ。
コーセーの外尾秀人執行役員は「昨今のお客さまの情報取得形態は日々変化している」と指摘する。インタラクティブな要素を加えて話題を集め、ブランド力強化や売り上げ増につなげる。
(文=山下絵梨)
日刊工業新聞2016年5月4日