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リアルタイムの商流でお金貸します!ネット銀行がビッグデータ活用し融資へ

メガバンク各行もECとの連携を模索
 銀行の融資モデルが将来的に大きく変わる可能性が出てきた。一部のネット専業銀行はECサイトの出店者向けに商品や売上高、顧客の評価など細かなデータ分析で融資する。決算書類や財務諸表でなく、既存の銀行が持ち得ない日々の取引情報を武器に新たなビジネスモデルの精緻化を急ぐ。

 「(決算書と違って)商流はごまかせない」。ジャパンネット銀行の小村充広社長は語る。同行では、現在、Yahoo!ショッピングの店舗向けに始めた「JNBストアローン」でヤフーの商流や店舗の評判情報を活用して、貸し出している。在庫を一時的に増やしたい、短期の審査で借りたい出店者が利用する。

 特徴的なのは融資モデル。決算書や財務諸表など過去の情報でなく、重視するのはリアルタイムの商流だ。

 今後は精査化がカギ。小村社長は、審査判断をビッグデータ活用では精緻化することで、「(貸出の上限枠や対象となる顧客を)広げていきたい」と意欲を示す。

 金融業界は転換点を迎えている。ネットやビッグデータの活用が進めば、これまで既存の銀行の融資対象になりにくい案件への融資も実現する。

 すでに海外ではネットを通じて投資家と借り主を結びつけ、不特定多数から少額の資金を調達する「クラウド・ファンディング」が注目されている。

 メガバンク各行も与信にビッグデータの活用をにらむ。水面下では電子商取引業者との連携を模索する動きも出てきているが、メガがメーンターゲットにするのはあくまでも一定規模の法人。メガではカバーできない隙間のニーズを誰が掘り起こし、取り込むかが焦点になる。

 日本では事業会社が銀行を傘下に置ける。楽天やセブン&アイ・ホールディングスが参入。ユーザー視点が不足しがちとも言われる金融業界に新風を吹き込んできた。楽天銀行の永井啓之社長は「これまでやってきたことをスピードをあげて取り組んでいきたい」と語る。
(文=栗下直也)
日刊工業新聞2016年4月29日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
ネット銀行はどこまでフィンテックを広げることができるか。APIを解放する動きも出てくるだろうし、AIの活用も進む。やはりリアルの店舗を持っているところは強い。個人的にはセブン&アイの動向に注目。

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