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熊本地震2週間。中小工業団地の復旧にハードル

道路・水・電気・・。資金対策にも難しさ
熊本地震2週間。中小工業団地の復旧にハードル

24社が立地する熊本南工業団地

 熊本地震の発生から約2週間が経過した。被災企業の多くが復旧に向けて踏み出したが、道路が損傷した工業団地では復旧費用の調達など新たな課題が浮き彫りになってきた。一方、29日午後に大分県中部で震度5強の地震が発生。熊本、大分両県で震度1以上の地震は14日以降、1000回を超えるなど地震活動が活発に続いている。

 熊本地震で被災した企業が着実に復旧を進める一方、別の課題が浮き彫りになってきた。損傷した道路など工業団地共用部分の復旧には、時間がかかる可能性がある。理由は資金の問題だ。

 熊本南工業団地(熊本県嘉島町、敷地面積約18万2000平方メートル)には、装置メーカーや鉄工所、鋳造所など24社が立地する。共用設備には排水・給水施設や水銀灯などがある。今回の地震で道路の擁壁が崩落し、隆起などが起きた。水道施設も破損した。

 団地内に本社を構えるプレシードの松本修一社長は「会社は電気がつながり水も出るようになった。設備の復旧は順次取り組んでいる。しかし団地の道路は傷みがひどい。排水もこぼれたまま」と不安を隠せない。

 同団地協同組合の富田恭司理事(富田鉄工社長)は「立地企業の被災総額は、調査した約3分の2の企業だけでも約18億円。被災企業は自社の復旧で手いっぱいで共有地の復旧まで手出しできない状況。ぜひとも国や県に協力を要請する」と力を込める。

 同団地は共有部のインフラを協同組合が運営しているが今回のような不測の事態には資金面での対応が難しい。背景には、協同組合で修繕費を計上してもインフラ整備に使わなかった分は利益扱いとなり、課税されて翌年に持ち越すことができず「結局積み立てていくことができない」(富田理事)という事情がある。

融資、緊急補正や条件緩和も


 しかし復旧を資金面で支援する動きが出てきた。熊本県は「制度融資の緊急補正を行う予定。県の融資では協同組合も対象。被災対象は条件緩和もある」(商工金融課)という。また日本政策金融公庫(日本公庫)や商工中金には災害復旧貸付制度がある。日本公庫熊本支店は「激甚災害指定が適用となり、災害復旧貸付金の金利を差し引く制度がある」と説明する。

 同団地協同組合は27日、避難状況の確認や今後の取り組みに関する1回目の意見交換会を開いた。行政や金融機関からも参加があり、東日本大震災後の復旧に対する資金面での公的融資の事例が紹介された。富田理事は協同組合の資金調達に関して今後も情報を収集していく。
日刊工業新聞「深層断面」から抜粋
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
道のりは長いが「負けんばい!」で踏ん張る中小企業を報道の面からも支援していきたい。

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