“はかりのイシダ”が生み出した外来患者案内システム。大手と渡り合う3つの差別化
医療システム分野でイノベーションを起こす本質とらえる
イシダ(京都市左京区)が新規事業となる医療システムで存在感を示している。2016年、外来患者が自動発行機で受け取った案内受信機で、電子カルテシステムと連携して、診察の順番、検査、会計の予告案内などを知ることができる外来患者案内システムを開発、販売した。大手企業がひしめく成長市場の医療・医薬分野で病院の評価が高まりつつある。
「薬科機器大手の注射薬自動払出装置に患者ごとのトレーの名札として、スーパーマーケットで使われている電子棚札が採用された」。イシダ医療・医薬事業企画室の國崎嘉人室長はこう振り返る。中・大型病院で100件ほど納入実績を積み、医療業界向けに参入する契機となった。
「はかりのイシダ」として名をはせる同社は、培ってきた電子棚札の技術を活用して外来患者案内システムを構築した。電子ペーパーパネルの制御、省電力、通信技術などのノウハウが生かされた。
システム完成後は売り込み強化だ。100床以上の中・大型病院を主なターゲットとする中、1号機が国立病院機構嬉野医療センター(佐賀県嬉野市)に採用された。「デザインや機能・性能、コストをうまく適合させれば、新規参入でも市場に受け入れられるとわかった」と同室長は手応えをつかむ。
同室長はまた「病院現場の声に丁寧に耳を傾け”答え付け“をしていくうちに、信頼関係ができ、本質的な問題が把握しやすくなった」と話す。まだ医療システム業界でイシダの認知度が低いことを自覚した上で、パートナーづくりも模索する。パートナーにはシステムと連携する電子カルテメーカーや代理店、商社なども含む。
競合大手との差別化をどう打ち出すか―。同室長は「開発前、外来患者案内システムについて多くの病院にヒアリングした。その結果、『見やすくわかりやすいこと』『簡易に運用できること』『Wi―Fi(ワイファイ)が使えること』が重要なことがわかった。
この三つをすべて備えている製品はなく、ここが後発の優位性」と強調する。デザインについてもメーカー主導にせず、「提案先から、ムリを言われてギリギリまで追い込むことも必要」(同室長)という。
医療関連の営業は電子棚札を担当する専門営業部署(京都、東京)が担う。一方、モノづくりは医療・医薬事業企画室が担当している。同室長は「営業だけでなく、病院の課題を解決できる”プロブレムソルバー“として解決提案できるようにしたい」と力を込める。そのために「現場のユーザーや病院幹部による大小のクレームから逃げないこと」と断言する。
同室長は医療・医薬事業企画室について「コンサルティング部隊と導入支援部隊に分けて、専門組織化したい。導入支援はコンサルティングへの登竜門、訓練の場としたい」という。
後発ながら急速に医療システムで評価を得るイシダ。内面を磨き、顧客と真摯(しんし)に向き合うことを地道に積み重ね、激戦の市場で“勝ち抜き”を目指す。
(文=林武志)
電子棚札の応用
「薬科機器大手の注射薬自動払出装置に患者ごとのトレーの名札として、スーパーマーケットで使われている電子棚札が採用された」。イシダ医療・医薬事業企画室の國崎嘉人室長はこう振り返る。中・大型病院で100件ほど納入実績を積み、医療業界向けに参入する契機となった。
「はかりのイシダ」として名をはせる同社は、培ってきた電子棚札の技術を活用して外来患者案内システムを構築した。電子ペーパーパネルの制御、省電力、通信技術などのノウハウが生かされた。
システム完成後は売り込み強化だ。100床以上の中・大型病院を主なターゲットとする中、1号機が国立病院機構嬉野医療センター(佐賀県嬉野市)に採用された。「デザインや機能・性能、コストをうまく適合させれば、新規参入でも市場に受け入れられるとわかった」と同室長は手応えをつかむ。
同室長はまた「病院現場の声に丁寧に耳を傾け”答え付け“をしていくうちに、信頼関係ができ、本質的な問題が把握しやすくなった」と話す。まだ医療システム業界でイシダの認知度が低いことを自覚した上で、パートナーづくりも模索する。パートナーにはシステムと連携する電子カルテメーカーや代理店、商社なども含む。
課題解決型で後発の利生かす
競合大手との差別化をどう打ち出すか―。同室長は「開発前、外来患者案内システムについて多くの病院にヒアリングした。その結果、『見やすくわかりやすいこと』『簡易に運用できること』『Wi―Fi(ワイファイ)が使えること』が重要なことがわかった。
この三つをすべて備えている製品はなく、ここが後発の優位性」と強調する。デザインについてもメーカー主導にせず、「提案先から、ムリを言われてギリギリまで追い込むことも必要」(同室長)という。
医療関連の営業は電子棚札を担当する専門営業部署(京都、東京)が担う。一方、モノづくりは医療・医薬事業企画室が担当している。同室長は「営業だけでなく、病院の課題を解決できる”プロブレムソルバー“として解決提案できるようにしたい」と力を込める。そのために「現場のユーザーや病院幹部による大小のクレームから逃げないこと」と断言する。
同室長は医療・医薬事業企画室について「コンサルティング部隊と導入支援部隊に分けて、専門組織化したい。導入支援はコンサルティングへの登竜門、訓練の場としたい」という。
後発ながら急速に医療システムで評価を得るイシダ。内面を磨き、顧客と真摯(しんし)に向き合うことを地道に積み重ね、激戦の市場で“勝ち抜き”を目指す。
(文=林武志)
日刊工業新聞2016年4月29日