企画・デザイン×技術力が決め手! 中小企業が「脱下請け」を図る方法
「自社製品を持ちたい。下請けから脱却したい」―。これは多くの町工場が抱く本音だ。一方で、独自に企画・デザインのノウハウを持つ中小製造業は少ない。その現状を打開しようと神奈川県内の中小企業3社とデザイナーがタッグを組み、町工場発オリジナル文房具ブランド「ファクショナリー」の展開に乗り出した。
ファクショナリーはファクトリー(工場)とステーショナリー(文房具)を掛け合わせた造語。2013年からモールドテック(神奈川県藤沢市)の落合孝明社長が構想を練り、設計・精密加工のクリード(同茅ケ崎市)の山下祐専務に相談してブランド化。製造業の交流会で出会った西村拓紀デザイン(東京都中央区)の西村拓紀社長が加わり、ブランドロゴやフライヤー、パッケージを完成させた。町工場が1社単独で展示会に出展するより、一つのブランドを通して、グループ出展することで各社のPRにつなげる。
第1弾としてクリードが製造したアルミニウム製定規「JOHGI」を15年4月に発売。航空機やレーシングカーの部品製造で培ったノウハウを生かし、寸法公差1000分の1ミリメートルの精度で切削した。目盛りの掘り込み深さは0・03ミリメートルで、印刷の目盛りと異なり、ずっと消えない。
消費税抜き価格は4000円。同年夏に発売したプロ野球の広島東洋カープ公式グッズであるオリジナル商品は5000円。同チームの黒田博樹投手モデルは背番号15にちなんで15の倍数で目盛りが刻まれている。16年のプロ野球開幕に合わせて50本限定で販売した黒田モデルは開幕直後に完売した。
第2弾はコンパクトで本体を回転させるとカードの傾き具合を変えられるバネ風のカードスタンド「CARDSTAND」で16年2月に発売。精密スプリング加工の五光発條(横浜市瀬谷区、村井秀敏社長)が製造した。カードを挟むバネ間のピッチは0・3ミリメートル。60度の傾斜をつけてステンレス線材を巻くのが難しかったという。消費税抜き価格はSサイズ5個、Lサイズ3個で各1500円。
商品デザインを手がけた西村氏は「大手企業と同じ土俵で戦うだけに妥協は許されない」と強調する。西村氏は町工場に足を運び、機械で何ができるか、どこまで加工できるかを確認。町工場を盛り立てるべく各社が持つ得意分野を生かし、機能に配慮したデザインを心がけた。「今すぐに加工できなくても背伸びして努力すればできる。一歩先を目指すことが大切だ」と話す。行政も巻き込みながら町おこしの一助になればと期待を寄せる。
商品開発の予算とノウハウが乏しい町工場は、大手企業と異なる商品化のアプローチが必要だ。技術力に強みを持つ町工場同士が連携し、デザイナーなど外部の力を借りて商品化する動きが今後も加速しそうだ。
(文=横浜・高島里沙)
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町工場の技結集
ファクショナリーはファクトリー(工場)とステーショナリー(文房具)を掛け合わせた造語。2013年からモールドテック(神奈川県藤沢市)の落合孝明社長が構想を練り、設計・精密加工のクリード(同茅ケ崎市)の山下祐専務に相談してブランド化。製造業の交流会で出会った西村拓紀デザイン(東京都中央区)の西村拓紀社長が加わり、ブランドロゴやフライヤー、パッケージを完成させた。町工場が1社単独で展示会に出展するより、一つのブランドを通して、グループ出展することで各社のPRにつなげる。
第1弾としてクリードが製造したアルミニウム製定規「JOHGI」を15年4月に発売。航空機やレーシングカーの部品製造で培ったノウハウを生かし、寸法公差1000分の1ミリメートルの精度で切削した。目盛りの掘り込み深さは0・03ミリメートルで、印刷の目盛りと異なり、ずっと消えない。
即完売の商品も
消費税抜き価格は4000円。同年夏に発売したプロ野球の広島東洋カープ公式グッズであるオリジナル商品は5000円。同チームの黒田博樹投手モデルは背番号15にちなんで15の倍数で目盛りが刻まれている。16年のプロ野球開幕に合わせて50本限定で販売した黒田モデルは開幕直後に完売した。
第2弾はコンパクトで本体を回転させるとカードの傾き具合を変えられるバネ風のカードスタンド「CARDSTAND」で16年2月に発売。精密スプリング加工の五光発條(横浜市瀬谷区、村井秀敏社長)が製造した。カードを挟むバネ間のピッチは0・3ミリメートル。60度の傾斜をつけてステンレス線材を巻くのが難しかったという。消費税抜き価格はSサイズ5個、Lサイズ3個で各1500円。
機能配慮の意匠
商品デザインを手がけた西村氏は「大手企業と同じ土俵で戦うだけに妥協は許されない」と強調する。西村氏は町工場に足を運び、機械で何ができるか、どこまで加工できるかを確認。町工場を盛り立てるべく各社が持つ得意分野を生かし、機能に配慮したデザインを心がけた。「今すぐに加工できなくても背伸びして努力すればできる。一歩先を目指すことが大切だ」と話す。行政も巻き込みながら町おこしの一助になればと期待を寄せる。
商品開発の予算とノウハウが乏しい町工場は、大手企業と異なる商品化のアプローチが必要だ。技術力に強みを持つ町工場同士が連携し、デザイナーなど外部の力を借りて商品化する動きが今後も加速しそうだ。
(文=横浜・高島里沙)
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日刊工業新聞2016年4月28日 中小企業・地域経済2面/2015年11月10日 モノづくり基盤・成長企業面/ 2015年3月6日 列島ネット2面