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大手生保が保育所開設に乗り出した!駅前立地の保有ビル活用

大手生保が保育所開設に乗り出した!駅前立地の保有ビル活用

住友生命は大阪でも保有ビルに保育所を誘致

 駅周辺の優良地にオフィスビルを多く保有する生命保険会社が、保有ビルの一部を保育所として活用する動きが出ている。待機児童問題をめぐっては保育士の確保と並んで、場所の確保も課題の一つ。生保会社は不動産の空室対策もかねて場所を提供する。ただ、保育所の条件に合致する不動産の確保は容易ではなく、通常のテナント誘致と異なる難しさもある。業界全体に取り組みが広がるには時間がかかりそうだ。

すでに児童700人受け入れ可能


 住友生命保険は東京都世田谷区が進める保育所開設に関連する補助事業に手を挙げた。概要は駅前の建物を認可保育園の分園として開設。主に0―2歳の低年齢児を保育し、3歳以上の児童は保育所に隣接する送迎ステーションに集め、保育園の本園にバスで送迎する取り組みだ。

 住生は「宇奈根なごやか園」を運営する社会福祉法人嬉泉と連携し、小田急小田原線成城学園前駅から徒歩数分の保有ビル1階に保育所を開設。低年齢児童20人、本園に送迎する高年齢児童20人を収容する。開設は7月以降の予定だ。

 保育所誘致で最も力を入れるのは第一生命保険。保有する14カ所のビルに保育園を開設し、すでに700人以上の児童が受け入れ可能だ。4月には西武新宿線野方駅から徒歩10分にある第一生命野方ビル(東京都中野区)内に学童保育を併設した新しい認可保育所も開設している。

空室対策の一環も、ハードルは高く…


 生保会社は駅前を中心とする優良地に多くの不動産を保有する。このため、利便性の高い駅周辺の保育所の場所を提供する事業者として期待は大きい。生保側も不動産の空室対策の一環として、保育所を開設する取り組みを進めてきた。

 ただ、実際にはハードルは高い。理由として認可保育園として必要なスペック面の問題がある。給排水設備やバリアフリー化、安全対策として二方向避難所の設置など規制が多く、「こうした条件をクリアできる物件は実際は少ない」と住友生命の不動産部不動産運用室の熊田久美子副長も話す。

 さらに実際に保育所を運営するのは社会福祉法人などの運営事業者。事業者側で保育士が確保しにくくなっている上、自治体から認可が下りず、補助金の確保が難しくなれば採算上の問題から保育をそもそも提供できなくなる可能性もある。

取り組みは一部の企業にとどまる


 このため、生保側の取り組みは一部の企業にとどまっているのが現状だ。業界団体の生命保険協会も、保育所への補助金を交付する助成事業は展開しているが、「場所の提供はあくまで加盟各社の判断。協会で呼びかけるのは難しい」と話す。

 保育所問題をめぐっては、共働き世帯の増加により、都市部を中心に保育所不足が社会的課題となっている。政府は、2017年度までに、年間で50万人分の保育の受け皿を確保して、待機児童解消を目指す方針を表明している。
(文=杉浦武士)
日刊工業新聞2016年4月28日 金融面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
周辺住民への配慮などで、保育所の立地がないことが問題になっています。駅前に不動産を保有する企業は他にもたくさんあると思いますので、ぜひこういった動きが活発化してほしいと思います。

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