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三菱重工、大型客船の損失はこれで本当に終わりなのか

事業方向性、秋に示す。「2番船」進捗カギに
三菱重工、大型客船の損失はこれで本当に終わりなのか

「現時点で予想できる損失を今回織り込んだ」と宮永社長

 三菱重工業が長崎造船所(長崎市)で建造中の欧アイーダ・クルーズ向け大型客船2隻に関連して、2014年3月期からの累計損失が2375億円に上る見通しとなった。受注した2隻のうち、1番船は3月14日に引き渡し済み。今後の損失リスクに対する焦点は、2番船建造の進捗(しんちょく)に移った。

 宮永俊一社長は25日に記者会見し「2番船は艤装(ぎそう)工事が本格化し、現時点で予想できる損失を今回織り込んだ」と説明した。ただ、2番船の引き渡し時期については「客先とさまざまな条件を交渉中で、16年中は難しい」との考えを示した。

 第4四半期に入り、引き渡しに向けた最終仕上げや本船全体の制御システムの確立、各種最終検査などの遅れが表面化し、特別損失を追加計上することとなった。宮永社長は「オイルと天然ガスの混焼エンジンを導入するなど最新鋭の設備を装備しており、これら作業に想定外の時間を要した」と分析する。

 一方、2番船については「客先と1番船のスペックを踏襲するという認識で一致している」と言及。1番船で蓄積したノウハウや技術を最大限活用し、早期の完工を目指す。

 2番船引き渡し後の大型客船事業に関しては「社内に客船事業の評価委員会を設けており、ここで今後の方向性を詰める」(宮永社長)とした。同委員会には化学プラントの部隊やエンジニアリング部隊が参加。大型案件のリスク管理のあり方などを検討し、16年夏から秋にかけて客船の継続を含め「ある程度の方向性を示す」と話した。

 最大の懸案だった大型客船案件について「終息を迎えつつある」と宮永社長。だがここにきて、持ち分法適用会社である三菱自動車の燃費試験データの不正操作問題が浮上。筆頭株主である三菱重工の新たな懸案事項が降って湧いた。この問題について宮永社長は「内容によっては、三菱重工の持ち分法投資損益に影響が出る」とした上で、「感情的なことに流されずに、一つひとつ冷静に対応する」と強調した。
長塚崇寛
長塚崇寛 Nagatsuka Takahiro 編集局ニュースセンター デスク
紆余曲折を経て1番船をようやく引き渡した間に、特損は2375億円に膨らんだ。2番船も計画の年内引き渡しは難しい状況で、一層のリスク管理が求められそう。今後は大型客船の建造を続けるかが焦点となる。その傍ら、三菱自動車の燃費試験データの不正操作問題という新たな難題が立ちふさがった。持ち分法適用会社である三菱自問題は三菱重工の業績への影響に加え、三菱ブランドの根幹を揺るがす事態に発展する可能性が大きい。この難題に宮永俊一社長はどう舵を取るのか。その決断は困難を極める。

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