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「トヨタ空港」社長にまたもトヨタ出身者

中部国際空港、初代から4代続けてトヨタ出身者が社長就任へ
「トヨタ空港」社長にまたもトヨタ出身者

中部空港社長に就任する友添氏(右)と現社長の川上氏

 【名古屋】中部国際空港は28日、川上博社長(65)が相談役に退き、後任にトヨタモーターセールス&マーケティング(東京都文京区)社長の友添雅直氏(61)を迎える人事を発表した。同空港社長は初代から4代続けてトヨタ自動車出身者が就くことになる。4月から新中期経営計画を始めたことを機に、経営陣の若返りを図る。6月24日の株主総会後の取締役会で正式決定する。

 友添氏はトヨタで海外営業畑を歩み、米国や豪州に15年以上駐在。トヨタのグローバル戦略を推進した。中部空港で記者会見した友添氏は、「航空業界は未知の分野。歴代社長の知見に学び、地域に貢献する空港を目指す」と語った。

 2月で開港10年を迎えた中部空港には、旅客便や貨物便の需要増、滑走路増設など課題も多い。友添氏は「利用しやすい空港にするため、まずは路線の拡充が使命」と気を引き締めた。

 川上氏は09年に豊田通商副社長から中部空港社長に就任。路線網拡充のほか、累積損失を計画から1年早い14年3月期に解消するなど、効率的な空港運営に努めた。

 中部空港は運営面で民間主導を打ち出し、建設費を大幅圧縮。商業事業などにも強みを持つ。トヨタ出身の社長が続くことは、「トヨタ流」の経営に地元政財界から高い期待が向けられていることの裏返しでもある。
 
 【略歴】友添雅直氏(ともぞえ・まさなお)77年(昭52)早大法卒、同年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。05年常務役員、11年専務役員、12年トヨタモーターセールス&マーケティング社長。福岡県出身。


◆次期社長に就任する友添氏

 「びっくりしたか」。友添氏の社長就任は、中部空港から次期社長の人選を依頼された豊田章男トヨタ社長が、直接内示したという。豊田氏は友添氏が社長を務めるトヨタモーターセールス&マーケティングの会長でもある。3月初旬、愛知県豊田市のトヨタ本社に呼ばれた友添氏は豊田氏からこのように声をかけられた。

 「想像していなかったので、びっくりした」(友添氏)。それでも、「知見を生かして頑張ってくれ」(豊田氏)と伝えられ、その場で引き受けたという。

 トヨタでは海外営業一筋。会見では、堪能な英語で空港経営への抱負を語る一幕もあった。現社長の川上博氏とは、2000年代前半に米国で上司、部下の関係だった間柄。川上氏は友添氏を、「打たれ強さ、芯の強さは空港ビジネスにうってつけ」と太鼓判を押す。

 米国駐在時代などにはよく海にスキューバダイビングに行っていたというアウトドア派。好きな言葉には「一意専心」を挙げる。


日刊工業新聞 2015年04月29日 総合3面記事に加筆
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
中部空港会社は歴代4社長がすべてトヨタ出身者となります。トヨタは空港会社に出資し、また多くの出張者らが空港を利用する「大口顧客」(川上社長)でもあることから、よく“トヨタ空港”と揶揄されます。空港会社自体は営業黒字を続けており、まさに健全経営と言えます。一方、首都圏の2空港や関空と比べた場合、空港としての存在感はまだまだ。今後も、欧米方面の路線拡充や新ターミナルの建設、第2滑走路の建設など、課題を挙げればきりがありません。

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