長距離便を削減、山善が推進する物流効率化の中身
自社で統合管理、在庫連携
山善は独自の統合物流管理システム(LMS)と倉庫管理システム(WMS)を導入して、大・小規模の物流拠点間の連携を進めている。配達先に近い小規模拠点「デポ」に一定の在庫を置いて短距離配送を増やすことで、大規模拠点「ロジス」による長距離の路線便配送を削減。二酸化炭素(CO2)排出量を減らし、物流効率化にもつなげている。
山善は物流拠点運営を外部に委託するサード・パーティー・ロジスティクス(3PL)化を進めていたが、委託先によりWMSが異なり、拠点間の連携が取れないのが課題だった。2023年から3PL化を見直し、物流拠点の自社運営に転換。独自のLMSを導入してWMSを統一し、各拠点の在庫や入出荷状況など物流全体を管理しやすくした。
ロジスとデポ、事業部の間で在庫管理情報を連携し、給湯器など住宅設備商品の倉庫だったデポにロジスから機械工具類などの生産財商品を一部在庫することで、デポを小規模配送拠点として活用。ロジス大東(大阪府大東市)では岡山デポ(岡山市南区)を活用し、路線便による配送量を約25%、CO2排出量を約23%削減した。
LMS導入でさまざまな効果も生まれた。LMSはトラック配車を管理する輸配送管理システム(TMS)とも連携でき、ロジス東京(埼玉県北本市)ではマテハン設備なども連携し、配送作業を効率化した。入荷時のトラックバースを予約制にして、トラックの待機時間を減らすことも実現。松田慎二執行役員物流企画管掌は「(物流の)2024年問題に対応する取り組みは今後さらに拡大する」と説明する。
現在、生産財を扱う7カ所のロジスのうちの2カ所とデポ4カ所でLMS・WMSを導入しており、25年1月に稼働予定の新ロジス大阪(大阪府東大阪市)など他の物流拠点でも導入を進める。ロジスからデポへの在庫補充は即納体制強化のため自社定期便を深夜にも運行する計画。すでに実証実験を始めた仙台デポ(仙台市宮城野区)を皮切りに、各拠点に拡大する予定だ。
LMSを活用し、子会社のヤマゼンロジスティクス(大阪市西区)では25年4月にもメーカーや同業の機械商社との共同配送も計画中。メーカーや商社へのミルクラン(巡回集荷)を行い、在庫と出荷作業をロジスで担う考えだ。松田執行役員は「出荷情報をブラックボックス化するシステムの開発に向けて相談を始めた。業界全体の物流効率向上につなげたい」と意気込む。(大阪・宇藤帆香)