生産能力2倍…新電元工業、「DC変換器」ライン内製の狙いと効果
部品実装、検査まで自動化
新電元工業は4輪車向けの直流電圧変換器(DC―DCコンバーター)「TW115」の自動化ラインを自社で構築し、2023年5月に量産を始めた。外部委託ではコストがかさむことから、社内の電子デバイス事業本部と電装事業本部が連携して構築。年間の生産能力は従来比2倍になり、人員面で約70%の削減効果を見込む。4輪車関連の事業拡大に向けて、コスト競争力のある製品開発と生産能力向上を両輪で進める。(間瀬はるか)
TW115は国内の完成車メーカー向けに製造している。従来のDC―DCコンバーターと違い、当初から自動化ラインでの製造を想定し設計。ロボットが上から組み立てられるような構造にした。
自動化ラインは専用装置による部品供給のほか、部品実装、組み立て、外観検査など約30工程で構成。部品供給装置は部品を専用トレーに置いてセットするだけで済む。トレー上の部品を入れ替えることで、他の製品にも対応可能。将来、TW115と同様に自動で組み付けられる構造の新製品が登場することを見据えた措置だ。
普段、電子デバイス事業本部は半導体設計・生産を担当。電装事業本部は電装製品の設計・生産を担う。両事業本部の連携による自動化ライン構築プロジェクトは21年1月に始まった。電子デバイス事業本部では過去に自動機を内製化した経験があったものの、30工程ほどの一貫生産ライン構築は初の試み。これまでの設備開発の中で最大規模だった。
電子デバイス製品と電装製品は、製品の構造や生産方式などが大きく違う。電子デバイス事業本部の大石眞也生産設備技術部長は「設備や部品の設計などの考え方が(両部門で)異なるのが苦労した点の一つ」と振り返る。一方、自社で手がけることでトラブル発生時に迅速な対応が可能になり、即座に情報を共有できるなどメリットも多くあった。
現在、自動化ラインは生産子会社の岡部新電元(埼玉県深谷市)で三つあるコンバーター生産ラインのうちの一つとして稼働する。既存ラインと比べて約70%の人員削減効果を見込み、神岡良知工場長は「人件費のほか教育にかかる労力の抑制につながる」とみる。
ロボットの動作制御やトレーサビリティー(履歴管理)システムなども自社で開発。タブレット端末で製品状態などの確認や遠隔操作が可能になり、管理業務の負担軽減に寄与する。今後も自動化ラインに適応した製品開発を加速。車の電動化ニーズに対応し、DC―DCコンバーターを事業の柱の一つとして拡大を目指す。