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半導体製造装置、エンジニアが足りない!…工場新設で争奪戦

運用・保守、国内外に需要/対策に遠隔システム導入

半導体分野での人材不足が深刻だ。特に製造装置のメンテナンスを行うフィールドエンジニアは不足感が高まっている。日本のみならず、米国や欧州、中国、台湾でも半導体工場の建設が相次ぐ。エンジニア不足は半導体製造装置各社の課題になっており、人材確保・育成に加え、ITなどによる効率化が欠かせない。(小林健人)

「同業だけでなく、製造装置を納入している半導体メーカーにフィールドエンジニアを引き抜かれることも珍しくない」。半導体製造装置メーカーの幹部はこう漏らす。

フィールドエンジニアは顧客の半導体工場で製造装置の立ち上げや調整、トラブル対応などを請け負う。半導体工場の効率的な運営には、フィールドエンジニアが欠かせない。また、半導体製造装置各社にとって、設置装置台数によって得られる保守サービスは安定的な収益となる。

不足感が強まる背景には、相次ぐ半導体工場の新設がある。製造装置の販売先がグローバルに広がり、多くのエンジニアを各国に配置しなければならない。別の半導体製造装置メーカーの幹部は「特に中国は日本よりも広い国土に多くの装置が売れていく。現地の人材を活用することに加え、育成も課題だ」と話す。

求人データにもその傾向は表れている。エン・ジャパンの求人サイト「エンゲージ」によれば、求人に「半導体」と「装置」をキーワードに含んだ2024年11月時点の全国での求人数は22年を100%として、426%まで伸びた。

今後、エンジニアの需要が増す中で単純に人手を増やすだけでは需要増に応えられない。そこで各社が取り組むのが遠隔システムの活用だ。

キヤノンは露光装置のデータを使い、スループットを高めたり、異常検知したりする「リソグラフィプラス」を展開する。キヤノンのオペレーターが遠隔で装置の状況を確認でき、保守サービスの効率化が図れる。キヤノンの武石洋明専務は同サービスを「自己成長するシステムだ」と説明する。半導体を製造するたびに製造装置が生み出す大量のデータを活用し、メンテナンスの効率化と製造の効率化を進める。

ITなどを活用した遠隔サービスは東京エレクトロンアドバンテストなども導入している。

今後エンジニア不足が続けば、半導体工場の安定稼働の大きな制約となる。各社の試行錯誤が求められる。


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日刊工業新聞 2024年12月27日

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