「海運」業績好調も…スエズ運河通航、情勢悪化で迂回の影響度
中東情勢悪化で一般商船がスエズ運河を通航できなくなり、迂回(うかい)路となる喜望峰経由を余儀なくされている。迂回により、欧州―アジア間の航行日数は約21日間伸び、船腹が逼迫(ひっぱく)。コンテナ船の運賃は高騰し、海運大手3社の業績は好調だが、2025年も再開の見通しがたたず、不透明な状況が続く。
日本郵船、商船三井、川崎汽船の海運大手3社の24年4―9月期連結決算は、コンテナ船のスポット運賃の上昇が収益を押し上げた。各社の経常利益は日本郵船が前年同期比81・6%増の2892億円、商船三井が同61・2%増の2490億円、川崎汽船が同2・3倍の1873億円と大幅増益だった。
イエメンの親イラン武装組織フーシ派による紅海での船舶への攻撃が始まったのは23年11月頃から。1月には日本郵船船籍の自動車専用船も拿捕(だほ)され、いまだ船員は解放されていない。スエズ運河の9月の通航隻数は前年同月比60%減と一般商船のほとんどが迂回路を通航している。
迂回で欧州―アジア間の1往復の航行日数は約21日、アジア―欧州―北米東岸間は約14日延び、船の手配だけでなく、コンテナの回送などにも影響し、船腹は急激に逼迫。運賃は1月ごろから上昇し、ピークの7月には上海―ロッテルダム間で40フィートコンテナ1個が8800ドル(約140万円)となり、23年10月の1300ドルの約7倍に跳ね上がった。その後、下落したが、足元は再び戻している。
ドナルド・トランプ米次期大統領は中東紛争の早期終結に意欲を示しており、実現すれば通航再開の可能性はある。ただ、和平交渉は難航が予想され、仮に終結してもスエズ運河の通航再開には時間がかかりそうだ。デンマーク海運大手APモラー・マースクは「25年に入っても通航再開は見込めない」と指摘し、海運各社は当面、迂回を前提に計画を立てざるを得ない状況にある。一連の混乱で海運各社の業績は好調だが、市況に左右される不安定な経営環境からの脱却は遠そうだ。