出荷3倍…「AIスマホ」相次ぎ投入、普及拡大の条件
低価格化で裾野拡大
2024年はスマートフォンでの人工知能(AI)利用が加速した。モバイルデータ通信やWi―Fi(ワイファイ)に接続できなくても翻訳や文章作成、画像の一部を消すことなどができる。またデータを外部に漏らさずに端末内で処理できるようになれば、データ保護の観点から安全性が向上する。25年は米アップルの生成AIが日本語にも対応し、AIスマホの裾野拡大が見込まれる。
MM総研(東京都港区)によると、24年度のAIスマホの出荷台数は前年度比約3倍の1149万台になると見られている。さらに28年度には2317万台になり、全体の90%近くを占めると予測する。
MM総研の横田英明取締役副所長は24年を「スマホとAIが融合し始めた最初の年になったといえる」と話す。具体的にはアップルが独自の生成AI「アップルインテリジェンス」を発表。9月にはアップルインテリジェンスに対応した「アイフォーン16」シリーズの販売を開始した。
ほかにも、韓国サムスン電子は「ギャラクシーS24」シリーズをAIスマホとして発売済み。また国内メーカーでは、シャープが「アクオス R9」を市場投入した。
AIを処理する半導体の開発がAIスマホの相次ぐ投入につながった。AIで利便性は高まるが、できることが限られるため「(消費者は)『AIが搭載されていなければ買わない』という思いにはまだ至っていない」(横田氏)と分析する。
AIスマホの端末価格も普及の障壁となる。AI処理に対応した中央演算処理装置(CPU)の価格が端末価格を押し上げる。例えばアイフォーン16シリーズは消費税込みで12万4800円からだ。
AI処理に対応したCPUの搭載先が増え、CPUの価格が下がることで「26年ごろには低価格帯の端末にも(AI処理に対応した)CPUが載る可能性はある」(横田氏)とみる。25年は、AIの有用性をスマホメーカーが顧客に訴求できるかが試される。
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