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国民のための組織に…学術会議のあり方問題、内閣府の歩み寄りが始まった

国民のための組織に…学術会議のあり方問題、内閣府の歩み寄りが始まった

有識者懇談会の岸座長(11月29日=東京都千代田区)

日本学術会議のあり方をめぐる問題で内閣府側の歩み寄りが始まった。内閣府に設置された有識者懇談会では内閣府側にも譲れる条件がないかと促されている。すべての項目で合意できずとも、懇談会としての結論はまとめる。課題は国民の総意の行方だ。少数与党の国会で総意を取り付ける必要がある。

「内閣府にも譲れるところは何かないのかと何度も言ってきている」と懇談会座長を務める岸輝雄東京大学名誉教授は振り返る。懇談会では会員の増員や任期延長については合意に近づいている。ただ法人化を機に会員を選び直す特別な選考や大臣任命の監事の設置などの論点では隔たりは大きいままだ。

例えば新設する選考助言委員会は委員の要件を緩和した。従来は研究動向や産業技術、その他などの4項目のすべてに高い識見を持つことが条件だったが、4項目のいずれかと修正した。担当官は「その他の知見でも要件は満たされる。実質的に誰でもよくなった」と説明する。また選考助言委員会は意見を述べるにとどまり「気に入らなければ無視できる。裁判ではそうなっている」という。真意が伝わっていない点があったが、すでに譲歩してきた部分をあらためて説明して理解を促す。

課題は学術会議法の科学者の総意の下に設立という前文を国民の総意の下に設立と改正する点だ。懇談会では学術会議が国民のためでなく、科学者のための組織になってしまう根拠として挙げられてきた。国民に支持される学術会議であるために、国民との約束として法律を改める。国民の総意自体は国会で取り付ける方針だった。

ただ国会が少数与党となり、総意の扱いが難しくなった。岸座長は「(内閣府には)国会(対応)もやってもらわないと困る。法律を作るんだから」という。もともと国民の総意と書かれた法令は憲法第一条の天皇の記述しかない。紛糾する可能性があるならば、法案には盛り込まない選択肢もあり得る。丁寧な対応が求められる。

日刊工業新聞 2024年12月05日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
内閣府が譲らない条件に新法人の設立時の特別な選考があります。この選考委員を、学術会議の会長が内閣総理大臣の指定する者と協議の上で任命する案と、内閣総理大臣が任命する設立委員が任命する案が検討されました。懇談会で合意が取れたとされる案では、(内閣総理大臣に任命された)設立委員は、(内閣総理大臣に任命された設立委員が任命した選考委員でつくる)選考委員会の選考結果に基づき、学術会議の意見を聴いて、会員を選定する。現会員は3年の任期が残っている方は新法人の会員と見なす。ただし3年後の次の会員選考のコ・オプデーションには参加しない。となっています。これまでも「意見を聞く」には法的拘束力はないと説明されてきました。新法人発足3年後には現会員が選んだ会員はいなくなります。特別な選考について学術会議は到底受け入れられない、政府の介入そのものであると言わざるを得ない、と説明してきました。学術会議の在り方を政治問題にするから問題が解けなくて、アカデミーの機能から組織や予算を積み上げていけばきっと解けるはずと取材してきたものの、最後まで政治問題だったのだと思います。ただ本当にいまの国会にかけるのか。有識者が言っていたように今度はガラガラポンと捨ててもう一回作り直す気かと問われかねません。在り方問題を元党内野党を倒して返り咲く時限爆弾に例える人もいて、もう本当にどうかと思います。独立性を担保するためにも学術会議は財源保証のない公益法人を選ばねばならないのではないかと思います。

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