国民のための組織に…学術会議のあり方問題、内閣府の歩み寄りが始まった
日本学術会議のあり方をめぐる問題で内閣府側の歩み寄りが始まった。内閣府に設置された有識者懇談会では内閣府側にも譲れる条件がないかと促されている。すべての項目で合意できずとも、懇談会としての結論はまとめる。課題は国民の総意の行方だ。少数与党の国会で総意を取り付ける必要がある。
「内閣府にも譲れるところは何かないのかと何度も言ってきている」と懇談会座長を務める岸輝雄東京大学名誉教授は振り返る。懇談会では会員の増員や任期延長については合意に近づいている。ただ法人化を機に会員を選び直す特別な選考や大臣任命の監事の設置などの論点では隔たりは大きいままだ。
例えば新設する選考助言委員会は委員の要件を緩和した。従来は研究動向や産業技術、その他などの4項目のすべてに高い識見を持つことが条件だったが、4項目のいずれかと修正した。担当官は「その他の知見でも要件は満たされる。実質的に誰でもよくなった」と説明する。また選考助言委員会は意見を述べるにとどまり「気に入らなければ無視できる。裁判ではそうなっている」という。真意が伝わっていない点があったが、すでに譲歩してきた部分をあらためて説明して理解を促す。
課題は学術会議法の科学者の総意の下に設立という前文を国民の総意の下に設立と改正する点だ。懇談会では学術会議が国民のためでなく、科学者のための組織になってしまう根拠として挙げられてきた。国民に支持される学術会議であるために、国民との約束として法律を改める。国民の総意自体は国会で取り付ける方針だった。
ただ国会が少数与党となり、総意の扱いが難しくなった。岸座長は「(内閣府には)国会(対応)もやってもらわないと困る。法律を作るんだから」という。もともと国民の総意と書かれた法令は憲法第一条の天皇の記述しかない。紛糾する可能性があるならば、法案には盛り込まない選択肢もあり得る。丁寧な対応が求められる。