月面走行ローバー、月・火星「箱庭」で実証…会津大など挑むプログラムの全容
リアル・バーチャル評価
会津大学の大竹真紀子教授を代表とするグループは、福島ロボットテストフィールド(RTF、福島県南相馬市)に完成した月・火星を模擬した実空間の基地で技術実証を開始した。シミュレーションを行うバーチャルシステムも開発し、同大の学生が技術実証する。実空間の宇宙環境での実証により、信頼性の高い宇宙機開発・運用プロセスを実現する宇宙情報系人材の育成を進める。
文部科学省の「『AI・デジタル化×宇宙』技術革新人材育成プログラム」に採択された「月火星箱庭教育プログラムによる宇宙情報系人材の育成基盤構築」プロジェクトで、2022年度からの3カ年事業。
第1段階として箱庭で月面でのローバーの走行を、リアルとバーチャル双方を活用して評価する。月面を模したシミュレーターチャンバー、探査ロボットの運用設備も設け、3タイプの評価施設での実施を想定。実証開始にこぎ着けた。
会津大からは学生が事業に参加。またクフウシヤ(相模原市中央区)が月面走行を想定したローバーを製作。走行関連はトヨタテクニカルディベロップメント(愛知県豊田市)、シミュレーション構築を東日本計算センター(福島県いわき市)が会津大と共同開発する。ローバーは4軸タイヤ、60センチメートル角の大きさで重量は27キログラム。高機能センサー「LiDAR(ライダー)」、カメラで位置を決めて走行制御する。
月面を模した直径22メートルのクレーターを盛土の台地そばに設置。月表面に類似した土壌を敷き詰め、月面と同じ抵抗でローバーが走行実証する。ローバーは台地の側の2カ所からクレーターへ入り、15度と30度の斜面を登る。人工的に作り上げた実環境での月表面の実証基地になる。
併せてシミュレーションを行うバーチャル基地も開発。月と同様の真空下、地球の6分の1の重力でローバーが動く環境を再現した。産業技術総合研究所が開発した、統合ロボットシミュレーター「コレオノイド」で模擬クレーターでのローバーの走行をシミュレーションする。
11月から始めた模擬環境での実証では会津大の学生16人が4チームでローバーの走行を競った。25年2月には実空間の月面の場で、全国で開発するさまざまなローバーを集めて遠隔操作で動かす「走行会」も予定する。