物流の2024年問題に化学業界はどう対応するか
三菱ケミカルグループや三井化学などが事務局を務める化学品ワーキンググループ(WG)は、デジタル技術を活用した共同物流の実現に向け取り組みを加速する。関東・東海地区での実証実験を通じ、効率化など一定の実積を上げた。物流の2024年問題だけでなく今後は輸送能力不足といった社会課題も重くのしかかる中、化学品に関わる事業者の連携拡大も重要性が増しそうだ。(山岸渉)
「化学業界は、あらゆる産業に製品や原料を届ける意味では社会のインフラだ。安定した製品供給は何としても守らないといけない」。三井化学デジタルトランスフォーメーション推進本部物流部の依田馨部長は、こう力を込める。
国が主導する「フィジカルインターネット実現会議」内に設置された化学品WGは、三菱ケミカルグループと三井化学に加え、東ソー、東レを事務局として化学品の共同物流などを検討してきた。荷主や物流事業者を中心に、約80社・団体が参画している。
今回、三重県四日市市と千葉県市原市エリアでの物流を対象に、最適な輸送に向けた共同物流のためのプラットフォーム(基盤)構築などを進める実証実験を実施。製品をパレットに積載できる形にそろえて運びやすくし、定期幹線便の効率的な運行などを目指す。共同物流プラットフォームを生かし、サンネット物流(千葉県市原市)の出庫から納入までを可視化するドライバーアプリケーションも活用した。
実証実験を通じ、一定の成果も確認。実証実験を統括するデロイトトーマツコンサルティングの清水裕久スペシャリストディレクターは「特に幹線輸送で効果が出ており、積載率でいうと約2割向上した。1台における行き帰りでの(貨物を積載した)実車率も、従来と比べると2割以上高まった」と手応えを示す。
このほど、サンネット物流の今津倉庫(千葉県市原市)での実証実験を公開。模擬の貨物を使い、フォークリフトでトラックに積み込むデモンストレーションなどを行った。実証実験では、いかに数量をまとめて大型トラックで運ぶかといった課題も出てきており、早期に対応する方針。早ければ25年、遅くとも数年以内にできるところから社会実装していきたい考えだ。
トラックドライバーの長時間労働の改善に向けた残業規制に伴う物流の2024年問題にあたっては、物流の適正化・生産性の向上について対策を講じなければ、30年度には輸送能力が約34%不足すると推計される。
それだけに、業界内外での協業を広げることの重要性は増している。化学品WGでもさらに化学メーカーなどからより多くの仲間を集めるため、業界団体や政府の支援も受けながら取り組みを推進する方針だ。
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