建設向け鋼材需要減…電炉の通期見通し、12社中9社が経常減益の背景
普通鋼電炉12社(非上場2社を含む)の2025年3月期業績予想は、東京鉄鋼と非公表とした2社を除く9社が経常減益を見込む。人手不足による工期遅れなどの影響で建設向け鋼材需要の減少が続くほか、景気低迷が長期化する中国の安価な余剰鋼材が東南アジアなど周辺国に流出し製品市況が停滞。人件費や物流費などのコストアップも利益確保の足かせになる。
東京製鉄は売上高と各利益段階を下方修正した。10月契約の店売り鋼材の建値を引き下げたことによる販売単価の下落に加え、引き合いの低下による販売数量の減少や、それに伴う生産コストの上昇などが影響する。小松崎裕司取締役常務執行役員は「国内における鋼材需要の伸び悩みが懸念される。メタルスプレッド(原料価格と製品販売価格の差)をうまく確保していきたい」と述べた。
共英製鋼も売上高と各利益段階を下方修正。国内鋼材事業は数量は横ばいながらメタルスプレッドがやや拡大する見込みで、計画通りの進捗(しんちょく)を予想する。一方、海外事業は中国の安価な鉄鋼製品がベトナムに流入し、競争激化や製品市況の低迷が続いていることなどを踏まえ、計画を下回ると見る。廣冨靖以社長は中国の鉄鋼輸出の影響について「ベトナムでの安値販売による、同国内高炉の価格政策を注視する。長期化すれば厳しい持久戦が続く」と懸念する。
合同製鉄は需要環境の低迷が長期化していることを受け、売上高のみ前回公表値比で100億円下方修正した。販価改善の先行きについて、内田裕之社長は「上期(4―9月)にやや改善したが、下期(10―25年3月)のさらなる値上げは厳しそうだ」との見方を示す。
一方、東京鉄鋼は売上高、各利益段階を上方修正した。売上高は前回公表値比で15億円、経常利益は40億円それぞれ上振れする。製品出荷価格へのコスト反映や関連商品などの出荷増が見込めるほか、主原料である鉄スクラップの購入価格が当初想定を大きく下回り、メタルスプレッドの改善が進む。
24年4―9月期決算は鋼材需要の落ち込みなどにより、東京鉄鋼と北越メタルを除く10社が経常減益となった。