国内出荷10%増…スマホ市場に底打ちの兆し、今後の伸びを左右する要因
スマートフォン市場に底打ちの兆しが出てきた。MM総研(東京都港区)の調査によると、2024年度上期(4―9月)のスマホ出荷台数は、前年同期比10・5%増の1279万2000台となった。通信事業者間の競争激化に伴って端末市場が活性化しており、24年度通期のスマホ出荷台数は前年度比9・8%増の2797万台となる見通しだ。電気通信事業法の一部改正に伴うプラス効果も見込まれ、本格的な回復軌道に乗るかが注目される。
23年度上期はフィーチャーフォン(従来型携帯電話)を含む携帯電話端末の総出荷台数が00年度以降で最少だった。24年度はその反動で出荷台数が増えたと言える。中でもスマホが伸びたのは、「過去2年間で減少した買い替え需要の回復が大きい」(MM総研)。AIを搭載したスマホや折り畳みスマホといった新製品の登場も出荷台数増加に寄与したという。実際、24年度上期には韓国サムスン電子の「ギャラクシーS24」や米アップルの「アイフォーン16」といったAIスマホが注目を集めた。
MM総研は今後のスマホ市場がゆるやかに拡大すると予測する。出荷台数は26年度に2805万台、28年度に2935万台となる見通し。「楽天モバイルの躍進や、(同社と競合する)携帯キャリアの料金プラン競争が端末市場にはプラスの影響を与える」ことを勘案した。
このほかにスマホ市場の伸びを左右しそうな要因が、電気通信事業法の省令改正に伴う端末割引の枠組みの見直しだ。割引上限額は、23年の電気通信事業法の省令改正により、最大4万円(消費税抜き)と設定された。総務省は24年も端末市場の活性化策の検討を継続。今回の省令改正により、周波数の高い電波のミリ波に対応した端末について、割引上限額を引き上げて5万5000円(同)とする。ミリ波を使うと高速大容量の通信ができるなどの利点がある。改正省令は12月26日に施行予定だ。
MM総研によると、24年度上期のミリ波対応スマホの出荷台数は約42万台で、スマホ全体の3・3%にとどまる。普及が進んでいない背景の一つには「対応時の価格転嫁による需要低下」があると分析している。ミリ波対応端末を安く入手できる環境が整えば、スマホ市場の活性化につながる可能性はある。
だがソフトバンクの宮川潤一社長は、「端末1台が20万、30万、40万円の時代になってきている。その中で1万5000円という単位の議論は、ちょっと時代にそぐわないのではないかと個人的には思う」と指摘する。割引上限額引き上げの実効性が注目される。
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