量子パルス1000倍高速化…東大・NTTなど、光量子コンピューター性能向上
東京大学の川﨑彬斗大学院生とアサバナント・ワリット助教、古澤明教授らは、NTTと情報通信研究機構などと共同で、量子状態のパルス光生成を1000倍高速化する手法を開発した。光源を数メガヘルツ(メガは100万)から6テラヘルツ(テラは1兆)に拡張した。実験では約1メガヘルツで量子状態を検出できた。現在は検出器が速度を制限しており、さらに70倍ほどの向上が見込める。
光量子コンピューターでは量子状態のパルス光を複数組み合わせて計算用の論理量子ビットを構成する。まずレーザー光源でパルス光を発生させ、導波路光パラメトリック増幅器(OPA)に通して量子もつれを起こして量子状態を測定する。
今回、6テラヘルツの光源を採用して100万倍に向上させた。さらに量子状態の生成と増幅にOPAを利用し、市販の高速測定装置で検出可能にした。これで検出速度が70ギガヘルツ(ギガは10億)と700倍に向上した。この光源と測定装置を組み合わせると1メガヘルツで量子状態のパルス光を生成・観測できた。
論理量子ビットを高速生成できると量子計算に対して誤り訂正を高頻度で行える。誤りが蓄積する前に訂正できるため実用性能が向上する。理化学研究所で光量子コンピューターの実機を構築しており、量子計算サービスをクラウド提供して量子人材を育てていく。
日刊工業新聞 2024年11月04日