目標性能は最高時速450km…「電動VTOL機」、日本で運航協議
SAF・水素活用も視野
カナダのホライゾン・エアクラフト(オンタリオ州)は開発中のハイブリッド方式の電動垂直離着陸(VTOL)小型航空機について、2028年以降の日本での運航サービスに向け協議している。来日したブランドン・ロビンソン最高経営責任者(CEO)は日刊工業新聞の取材に対し、「日本の地域航空会社やリース会社と現在話し合いを進めている」と明らかにした。部品や部材の調達についても日本の製造業と協力を進めたい意向を示した。
同社は13年に創業し、米ナスダック市場に上場している。医療用品や臓器、緊急の医療搬送、災害対応など向けに7人乗りの電動VTOL機「Cavorite(キャボライト)X7」の開発を進める。翼幅15メートルの主翼と前翼に組み込まれた計14個の小型電動ファンを使って離着陸を行う。上昇後はファンの部分にカバーがスライドし、主翼後部のプロペラで水平飛行に移る仕組みだ。
共同創業者でもあるロビンソンCEOは「ヘリコプターによる緊急搬送に比べて時間当たりのコストは約半分で、2倍の距離を運航できる」と利点を強調。最高時速450キロメートル、航続距離800キロメートル、最大積載量680キログラムといった目標性能を掲げる。
駆動源にはプラット・アンド・ホイットニー・カナダのターボプロップエンジン「PT6」の採用を検討中という。これと容量40キロワット時のバッテリーとを組み合わせ電動ファンを回転し、温暖化ガス排出量の30%削減が可能。ゆくゆくは「SAF(持続可能な航空燃料)や水素燃料の活用も進める」(ロビンソンCEO)とする。
現在は翼幅7メートルの2分の1モデルの試作機で試験飛行に入り、並行して実物大モデルの組み立ても開始した。実機の機体は2年後をめどに完成する予定。米連邦航空局(FAA)と2国間協定を結ぶカナダ運輸省の型式証明を取得後、早ければ28年に量産と北米での運航を開始し、日本など他の地域でのサービスに乗り出す計画という。