売上高5倍へ…旭化成がリチウム電池部材を拡販、足がかりはセパレーター
北米・日本でEV需要狙う
旭化成はリチウムイオン電池(LiB)用湿式セパレーターなど電池関連の提案を加速する。10月に設立した旭化成バッテリーセパレータ(東京都千代田区)が、北米や日本での電気自動車(EV)向け需要などに迅速に対応。LiB用湿式セパレーターで2032年3月期に23年3月期比約5倍となる売上高1600億円を目指す中、新会社を生かし電解液など関連製品での上積みも狙う。
旭化成バッテリーセパレータはLiB用湿式セパレーター「ハイポア」事業を手がける。同社には日本政策投資銀行も出資。需要対応への迅速な意思決定や、投資を含めた他社との連携強化につなげる。27年にはハイポアの一貫生産工場をカナダに建設し、稼働させる計画。24年中には、カナダでのハイポア製造を担うホンダとの合同出資会社を設立する予定だ。
旭化成バッテリーセパレータは北米でEVなどを手がける自動車メーカーや電池メーカーなどと連携し、独立したサプライチェーン(供給網)の構築に向けて取り組む。ハイポアの供給をきっかけに、30年ごろをめどに電解液などセパレーター以外の分野でも一定の事業確立に貢献したい考えだ。
また北米における原料調達についても、事業継続計画(BCP)対策を念頭に現地調達に切り替えていく方針。原料メーカーとの協議を通じて、比較的採用しやすい原料から順次進めていく。
一方、日本国内でも政府主導の支援を追い風に自動車メーカーや電池メーカーがEVや電池の投資計画を具体化してきている。旭化成バッテリーセパレータとしても供給計画を詰めている段階で、同社の谷口龍社長は「30年には一定量は出てくる」と予測。国内での対応も本格化させる意向を示す。
旭化成は次の成長をけん引する事業(GG10)の一つに、蓄エネルギーを掲げている。電池関連のさらなる開拓により、蓄エネルギー事業の拡大にもつなげていく構えだ。
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