輪軸データ不正で再発防止策…JR貨物、車両検査改革の行方
社長直轄で監査チーム/基準値統一・圧入機システム更新
JR貨物は車両の荷重を支える部品「輪軸」の検査データ不正問題を受け、社長直轄の社内監査チームを11月中に立ち上げるなど、再発防止体制を構築する。監査チームには外部の知見も取り入れ、業務手順などを社長が直接確認し、コンプライアンス(法令順守)を徹底。これまで現場でまちまちになっていた検査基準値を統一するほか、新たなソフトウエアを導入し、不正が起こらない仕組みにする。(高屋優理)
JR貨物の犬飼新社長は社内監査チームについて「社内ではあるが、第三者的に目線が違う監査部門に置くことで、チェックする体制にする」と機能を説明する。また、社内で実施している、階層別、職能別など約150の人事研修において、ハンドブックを持参し、あらためてコンプライアンスを学ぶ時間を設けるなど社員の意識を高める。
JR貨物の輪軸の検査データ不正問題では、車輪に車軸を圧入して取り付ける作業で、圧力が基準値を上回った場合、検査データを基準値内に差し替えていた。検査不正は輪西車両所(北海道室蘭市)、川崎車両所(川崎市川崎区)、広島車両所(広島市東区)の3カ所で発生し、1156本の輪軸について検査データを改ざんし、現在、626両の運行を停止している。
検査データの改ざんが発生した背景についてJR貨物は、圧力の基準値には日本産業規格(JIS)の基準値と国鉄規格(JRS)基準値があり、「車両所によって上限値の捉え方が異なっていた」(犬飼社長)と説明。今後は現場で運用しやすいように社内基準を統一するほか、作業の管理者が一緒に検査に入る作業帯同を徹底する。
また、車輪に車軸を圧入する圧入機をデータの改ざんできないシステムに改良。輪西車両所はすでに新たなソフトウエアを導入。広島車両所も年明けまでに更新し、川崎車両所はハードウエアも合わせて年明けまでに更新する。
JR貨物では現在、626両のうち約1割の車両については点検が済んでおり、2024年中に全車両を運行に復帰させるとしている。不正問題に対する経営責任について犬飼社長は「現在は国土交通省の監査が継続中で、処分などはまだ受けていないため、対策に注力している」と明言は避けた。ただ国交省の処分などが出た後、「服務規程に照らし、どう対応するか検討する」とした。輪軸の検査データ不正問題は他社にも波及しており、発端となったJR貨物の対策が注目されることになる。