「価格転嫁」8割が不十分…中小企業、苦境下に賃上げ
全国中小企業団体中央会がまとめた2024年度中小企業労働事情実態調査によると、価格転嫁の実現が49・9%と横ばいにとどまり、うち価格転嫁率30%未満が78・1%に上った。賃金は人手確保や物価高を背景に賃上げ率(加重平均。実施しない、引き下げ含む)が3・74%と前年度比0・39ポイント上昇。価格転嫁が不十分な中での賃上げが多く、中小の経営環境は厳しさを増している。
同態調査は従業員300人以下の中小企業に7月に実施、1万7066社が回答した。調査結果の公表は初めて。
価格転嫁は交渉中が17・4%、今後交渉を行うが8・1%で、転嫁の内容(予定を含む)は原材料が74・7%に対し、人件費が40・3%と苦戦している。価格転嫁率は10―30%未満が39・8%、10%未満が38・3%。転嫁が不十分な30%未満が8割弱を占めた。
一方、賃上げは6月までに実施済みが60・6%、引き上げる予定が12・6%で計73・2%(22年度比11・3ポイント増)と2年で上昇した。中身は定期昇給が54・1%、基本給引き上げが34・9%、ベースアップが31・2%の順で、ここ2年はベアの伸び率が高い。
重視した要素は労働力の確保・定着が64・0%で最多。企業業績の52・6%は横ばい傾向だが、物価動向が48・4%(同26・8ポイント増)、世間相場が36・6%(同12・2ポイント増)、賃上げムードが24・7%(同18・4ポイント増)といずれも急伸した。
平均賃上げ率は従業員1―4人が3・47%、業種では印刷・印刷関連が3・15%、小売業が3・38%、繊維工業が3・51%と低く、2極化が懸念される。
今後も成長型経済の実現へ持続的賃上げがカギとなる。引き続き粘り強い価格転嫁交渉と取引適正化に取り組みつつ、デジタル変革(DX)化や生産性向上により収益力を高める努力が求められる。