キッチン生産工程不良改善…LIXILが工場改革へ、DX人材育成を推進
LIXILのシステムキッチン生産の主力拠点であるLIXILサンウエーブ製作所(埼玉県深谷市)の深谷工場(同)は、デジタル変革(DX)の知見を持つ人材の育成を進める。技術力向上の担い手を増やし、「デジタル活用をドラスチックに進めて改善スピードを上げる」(LIXILサンウエーブ製作所の中出匡宣深谷工場長)のが狙いだ。生産性や施工性を高めようと工場改革に取り組む。(地主豊)
深谷工場はDXを支える人材育成の施策として、ITスキルの高いデジタル人材のキャリア(中途入社)採用を強化する。2025年度の新入社員にはキャリア採用の社員を基点にした水準のデジタル教育をすることを想定。教育を受けた新入社員を現場に配属することで「DXを加速させる」(中出工場長)考えだ。
LIXILでは、プログラミングの知識がなくてもアプリケーションが手軽に作れる「ノーコード」の活用が全社で進む。現場で自前の業務改善システムを作り、データを可視化するなど運用が広がっている。
深谷工場ではピッキング工程においてシステムアプリをノーコードで作り、市販品のランプやセンサーを組み込んで連動させた。このようなシステムを各工程に広げる方針だ。
また工程の不良率や日々の生産性などがデジタル活用によりリアルタイムで見える化されるようになり「改善活動は進捗(しんちょく)しつつある」(中出工場長)とみる。
積み込みの集中回避やドライバーの荷待ち解消にも取り組む。受注の制御システムを数年前に導入し、日々の生産負荷や配送量を平準化。物流の「2024年問題」の解決を図る。
中出工場長は4月の着任以降、サプライヤーを訪問し「サプライチェーン(供給網)の競争力を高めるために、強いネットワークをつくる必要性を実感した」という。
セラミックス製のワークトップ(調理台)やステンレスのシンクなど、深谷工場のコア技術を生かした製品提案を目標に据える。システムキッチンは構造が複雑でバリエーションが多く、生産や運搬、施工には幅広い製品知識が必要とされる。さらに体積が大きいため作業負荷の軽減が課題だ。少子高齢化が進む中、「軽量化した施工性の高い製品が不可欠」(中出工場長)としている。
24年度は工場見学を通じた「見せる工場」化を掲げ、リニューアルに力を入れる。また顧客だけでなく従業員もショールームや応接室で完成したキッチンを見る機会を作り、「自分たちの製品に誇りを持ってもらう」(同)方針だ。デジタルに加え意識改革の側面からも生産性の押し上げを図る。