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<防災最前線#03>ブリヂストン、免震ゴムの納入・適用拡大

東日本大震災を受けて、各社はどう対応したのか
<防災最前線#03>ブリヂストン、免震ゴムの納入・適用拡大

積層も自動化し、納期とコストを改善

 人々の命と暮らしに甚大な被害をもたらした東日本大震災から5年が経過した。ブリヂストンが手がける免震ゴムは、震災以降各方面から注目され、高層、中層、低層あらゆる新築建造物に納入されている。そのシェアは国内でおよそ50%におよぶ。背景には、免震体験車などによる地道な拡販活動がある。生産拠点である横浜工場(横浜市戸塚区)では新製法で量産を開始し、さらなる普及に向けて一歩踏み出している。

 ブリヂストンが免震ゴムを発売したのは1983年(昭58)。それ以来、30年以上にわたって改良や新製品開発を重ねた。現在ではバリエーションの豊富な免震ゴムのトップブランドとして、ゼネコンなどからの信頼も厚い。

 免震ゴムは、薄いゴムと鋼板を交互に重ねた構造。上下方向には鋼板の堅さが働いて建物を支え、水平方向にはゴムの柔らかさが働いて地震による振動エネルギーを吸収し、ゆったりと平行に揺れる。家具などが倒れにくくなって二次災害を抑え、建物自体の被害も減らせるほか、地震発生時の安全が確保できる。
 
 免震建築物は95年の阪神・淡路大震災を機に注目されるようになり、新潟県中越地震、東日本大震災を経て年間100棟単位で棟数が増加。13年末までの合計はビルで3000棟を超えた。

体験車や施設


 同社による調査でも、震災の被害が大きかった仙台市の仙台駅周辺の都市部における棟数は11年末の21棟から15年末には68棟へ。有明や豊洲など東京都湾岸エリアでは、同じ期間に21棟から46棟へ増加している。「その半分に当社の免震ゴムが入っている」と西田淳一インフラ資材事業企画部長は強調する。

 免震ゴムは災害から日が経過するにつれ、関心が薄れていきがちなもの。そこで同社は、大型トラックベースの「免震体験車」を14年1月に用意し、全国各地のマンション販売センターや自治体の防災訓練などにおもむいて体験会を開いている。

 15年末までに2万5000人以上が乗車した。さらに15年7月、横浜工場内にPR施設「免震館」をオープンした。館内では、製品展示によるプレゼンテーションや免震設計勉強会などを開いている。

積層作業を自動化


 広報活動に並行して取り組んだのが、免震ゴムの新製法「プレフォーミング製法」の確立だ。数人がかりで携わり、ゴムのベタつきによる作業性の低下が課題だったゴムの圧延、打ち抜き、鋼板への積層の3作業を自動化。

 鋼板へ射出し圧縮成形されたゴムのディスクを、ロボットアームで積層する。必要な人員はオペレーター1人だけだ。「従来より、作業時間を約3分の1に短縮。労務費も減ったため、コスト的にも効果が出た」と室田伸夫インフラ資材開発部長は説明する。

 現在、同製法を適用しているのは、中低層建物向けなどの4シリーズ(直径600ミリ―1000ミリメートル)。今後は適用範囲を広げる。そして、人手ではゴムが柔らかすぎて扱えなかった「低弾性領域」の製品の開発も視野に入れ、さらなる普及に努める。
(文=山田諒)
日刊工業新聞2016年3月21日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
今回は余震と呼べないほどの揺れが続いています。

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