低コスト混焼エンジン実験成功、期待高まる「高知産ロケット」の未来図
搭載へ「着実に前進」 軽量化に向け試作機
高知工科大学の学生で構成する「RaSK」(安藤陽史代表=システム工学群3年生)と高知県工業会は、コロナ禍で中断していた自作ハイブリッドロケットエンジンを搭載したロケット打ち上げプロジェクトを再始動した。これまで既製品のロケットエンジンによる打ち上げには成功していたが、自作のエンジン開発を目指し、9月末に部品供給で協力する高知県工業会と共同で燃焼実験に成功した。(四国支局長・香西貴之)
「自作ロケットエンジン搭載に向け一歩前進した。着実に進んでいることを分かりやすく示せた」と安藤代表は胸をなで下ろす。ハイブリッドロケットエンジンは固体燃料と液体酸化剤の長所を組み合わせた次世代エンジン。低コストで製作でき、比較的安全なため日本の学生ロケット製作チームで広く採用されている。
今回の実験で推力計算のデータがそろい、次は軽量化に向けて試作機を製作予定だ。高知県工業会の四国スッピル工業(高知県南国市)の小比賀俊文社長は「知らない分野の実験に奥深いものがあった。自分たちの部品が使われており最後まで見届けたい」と語る。当日は同工業会の山崎道生会長(山崎技研〈同香美市〉会長)のほか、キヨトウ(同香南市)の清藤貴子社長ら工業会の会員も燃焼実験を見守った。
RaSKと工業会の開発は、RaSKがこれまで使用した既製の大型ハイブリッドロケットエンジンが、近年は入手が困難になり、自作に着手したのがきっかけ。ただ製作資金や精密な加工技術が必要だった。
2018年夏にRaSKが山崎技研を見学した時に山崎会長が取り組みに賛同し、熱い思いで学生の背中を押した。山崎会長が直接、工業会の会員企業に紹介して協賛を依頼する機会を作り、多くの会員企業から開発資金と技術供与の協賛を得た。開発資金は高知県内外の30の企業や個人から約90万円を集めた。
コロナ禍による中断などもあったが、工業会の会員企業がロケットエンジンの設計から部品の製作に参加して全10部品を完成。学生が燃料関係2部品を完成して、エンジンを組み上げ、耐久試験も無事クリア。9月末の大学グラウンドでの実証実験が実現した。
今後RaSKは既製品エンジンによる到達高度約900メートルを上回る同1キロメートルを目指す。このプロジェクトを機に将来、高知発の宇宙産業が広がることを期待している。