国産ウイスキー輸出額、14年比8.6倍…人気の理由と課題
日本で製造された「ジャパニーズウイスキー」の人気が続いている。財務省貿易統計によると、2023年のウイスキーの輸出額は500億円だった。世界的な物価高などの影響で22年比では10・6%減だったが、14年と比べると8・6倍になっている。一方で課題となっているのが原酒不足だ。ウイスキー業界は安定供給に努めるとともに、品質確保のための取り組みを続けている。
「マーケットは底堅い」―。8日、品質に関する説明会を開いたサントリーの森本昌紀常務執行役員スピリッツ本部長は、昨今のブームに手応えを示す。同社は1923年以降、100年以上ウイスキー生産に取り組んできた。「市場低迷期でも続けた品質へのこだわりが世界的に評価されるウイスキーにつながった」と胸を張る。
ジャパニーズウイスキーは世界5大ウイスキーの一つ。「発酵、蒸留などの工程だけでなく、貯蔵原酒の味の管理も徹底する」(サントリーの明星嘉夫ブレンダー室長)ことで生まれる繊細な味わいが国内外での需要増につながっている。同社の調べでは、23年の国内のウイスキー蒸留所数は、14年比8・1倍の97となった。
人気の一方で課題となっているのが原酒不足だ。低品質のウイスキーがジャパニーズウイスキーとして取引されるリスクもある。日本洋酒酒造組合はジャパニーズウイスキーの定義を「原材料は麦芽、穀類、日本で採水した水に限る」「日本で製造し、3年以上貯蔵した」などとし、4月に本格施行した。
サントリーの森本常務執行役員は「ウイスキー生産は急な需要への対応は難しい」とした上で「日々フル回転で製造している。出荷量を増やしていきたい」と説明する。
日刊工業新聞 2024年10月09日