理研が開発、皮膚より柔らかい極薄歪みセンサーの可能性
理化学研究所の李成薫研究員と染谷隆夫主任研究員らは、皮膚より柔らかい極薄歪みセンサーを開発した。指先に貼り付けると指先の変形に応じて電気抵抗が変わる。ボールを投げる瞬間の指先など、繊細で高速な動作を計測できる。スポーツや医療、製造業の職人技などの高度化やデジタル変革(DX)に提案していく。
ポリウレタンで極めて細い繊維を作り、繊維のメッシュに金を蒸着する。ポリウレタン繊維のメッシュを保護層、金を蒸着したメッシュを導通層として歪みセンサーを作製した。歪みセンサーが変形すると内部で繊維が伸びて蒸着金が断線して電気抵抗が上がる。
実験ではセンサーを40%伸ばすと抵抗が39倍に上昇した。感度に相当するゲージ率は97。市販の抵抗測定回路では60ミリ秒間隔で投手がボールを投げて球が指から離れる瞬間を計測できた。電気抵抗を測るシンプルな原理のため、時間分解能がミリ秒以下の高速計測も可能と見込む。
引張剛性は1ミリメートル当たり7・7ミリニュートンと表皮の約100ミリニュートンを大幅に下回った。皮膚より柔らかく、指の変形に追従できる。160キロパスカル以上の圧力でこすっても壊れない摩擦耐久性を確認した。指が出せる最大の圧力が約200キロパスカルのため大半のシーンに適用できる。
指の硬さは汗や脂、湿度などで変わるため感覚と接触具合が必ずしも一致しない。指先の変形過程を精密に計測すると補正できる可能性がある。触覚や職人技のデジタル化や高度化に提案していく。
日刊工業新聞 2024年10月03日