宇部興産がLIB電池部材の生産能力2倍へ。自動車メーカーとうまく付き合う
高機能セパレーターで中・韓と差別化
宇部興産は2018年度までに、リチウムイオン二次電池(LIB)部材の売上高を300億円強に引き上げる。セパレーター(絶縁材)は主要な電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)に搭載したLIBに採用されており、20年をめどに年産能力を現状比2倍の3億平方メートルに増強する。電解液では技術革新とコスト削減に取り組み、中国や欧米の車載電池の需要増を取り込む。
日立マクセルとの合弁会社、宇部マクセル(京都府大山崎町)の高機能塗布型セパレーターがトヨタ自動車の新型HV「プリウス」に搭載したLIBに採用された。宇部興産のセパレーターに日立マクセルの分散塗布技術を用いてコーティング膜を形成することで高温耐熱性を強化。電池が高温になった際の挙動安定性、高入出力特性が評価された。
今後も需要増が見込めるため、7月に宇部ケミカル工場(山口県宇部市)、17年6月に堺工場(堺市西区)のセパレーター生産能力を増強し、17年に現状比4割増の2億平方メートルにする。
電解液は車載向けで出遅れたが、材料や製法を見直すコストダウンを進める。電解液原料となる炭酸ジメチル(DMC)などのライセンス供与で、26年までに100億円以上の売り上げを目指す。DMCは中国の肥料メーカー、中塩紅四方(安徽省合肥市)へのライセンス供与を決めた。今後は車載用LIBの需要増が見込める北中米でのライセンス供与を見込む。
堺工場では7月にセパレーターと電解液などの研究開発拠点「大阪研究開発センター」が完成する。堺工場はセパレーター、電解液を生産し、電池大手の拠点にも近い。生産現場や顧客との連携強化で、LIB部材の新製品開発を強化する。
調査会社の富士経済(東京都中央区)がまとめた次世代環境自動車向けの大型二次電池の世界市場は25年に6兆3649億円と、14年比10・2倍になる見通し。
地域別では、EVの生産が急拡大した中国が同11・6倍の1兆6164億円になると予測。北・中南米(同10・7倍の2兆149億円)、欧州(同17・7倍の1兆8328億円)でも大幅な需要増が見込めるとした。
この需要増を取り込むべく、米テスラモーターズはネバダ州で新電池工場「ギガファクトリー」を年内に稼働する予定。中国の電池自動車メーカー、比亜迪(BYD)は山西省太原市にEV新工場を建設するほか、パナソニックは中国・大連市の工場を12月に完成させる方針。
セパレーターでも、旭化成が車載用に使う乾式セパレーターに強い米ポリポアを約2600億円で買収した。住友化学は韓国で17年度に新工場を建設し、年産能力を20年に4億平方メートル超と15年比3倍以上に引き上げるなど、日系メーカーで生産能力の増強が相次いでいる。
(文=水嶋真人)
日立マクセルとの合弁会社、宇部マクセル(京都府大山崎町)の高機能塗布型セパレーターがトヨタ自動車の新型HV「プリウス」に搭載したLIBに採用された。宇部興産のセパレーターに日立マクセルの分散塗布技術を用いてコーティング膜を形成することで高温耐熱性を強化。電池が高温になった際の挙動安定性、高入出力特性が評価された。
今後も需要増が見込めるため、7月に宇部ケミカル工場(山口県宇部市)、17年6月に堺工場(堺市西区)のセパレーター生産能力を増強し、17年に現状比4割増の2億平方メートルにする。
電解液でも巻き返し
電解液は車載向けで出遅れたが、材料や製法を見直すコストダウンを進める。電解液原料となる炭酸ジメチル(DMC)などのライセンス供与で、26年までに100億円以上の売り上げを目指す。DMCは中国の肥料メーカー、中塩紅四方(安徽省合肥市)へのライセンス供与を決めた。今後は車載用LIBの需要増が見込める北中米でのライセンス供与を見込む。
堺工場では7月にセパレーターと電解液などの研究開発拠点「大阪研究開発センター」が完成する。堺工場はセパレーター、電解液を生産し、電池大手の拠点にも近い。生産現場や顧客との連携強化で、LIB部材の新製品開発を強化する。
調査会社の富士経済(東京都中央区)がまとめた次世代環境自動車向けの大型二次電池の世界市場は25年に6兆3649億円と、14年比10・2倍になる見通し。
地域別では、EVの生産が急拡大した中国が同11・6倍の1兆6164億円になると予測。北・中南米(同10・7倍の2兆149億円)、欧州(同17・7倍の1兆8328億円)でも大幅な需要増が見込めるとした。
この需要増を取り込むべく、米テスラモーターズはネバダ州で新電池工場「ギガファクトリー」を年内に稼働する予定。中国の電池自動車メーカー、比亜迪(BYD)は山西省太原市にEV新工場を建設するほか、パナソニックは中国・大連市の工場を12月に完成させる方針。
セパレーターでも、旭化成が車載用に使う乾式セパレーターに強い米ポリポアを約2600億円で買収した。住友化学は韓国で17年度に新工場を建設し、年産能力を20年に4億平方メートル超と15年比3倍以上に引き上げるなど、日系メーカーで生産能力の増強が相次いでいる。
(文=水嶋真人)
日刊工業新聞2016年4月13日素材面