「会員2000万に増やす」…KDDIがPonta経済圏強化へ、ローソンと連携であの手・この手
データ容量 来店で無償回復
KDDIが出資比率を50%に高めたローソンとの連携を生かした自社経済圏の強化に乗り出す。2日には有料会員サービス「auスマートパスプレミアム」を「Ponta(ポンタ)パス」に変更し、ローソン向け特典を拡充。オンライン専用の携帯通信ブランド「povo(ポヴォ)」のデータ容量がローソン来店時に無償で回復するサービスも年内に始める。「Ponta経済圏」の付加価値を高めつつローソンへの誘客につなげる相乗効果を狙う。(編集委員・水嶋真人)
「(会員数を)現状の1500万から2000万に増やす」。KDDIの高橋誠社長は三菱商事などと9月に開いたローソン店舗戦略説明会でPontaパスへの意気込みを示した。Pontaパスの月額料金は548円(消費税込み)。auスマートパスプレミアムと同額に据え置く一方で「(毎月)3000円以上お得な会員サービスにリニューアルする」(高橋社長)。
ローソン向けでは毎月1100円分以上の特典を用意する。毎月計600円以上の無料・割引クーポンを週替わりで配布。スマートフォン決済「auペイ」での支払い200円ごとに「Pontaポイント」を最大2%付与するなど、ポイント循環による経済圏拡大の仕掛けも用意した。
KDDIの主力事業である携帯通信との相乗効果を生み出す施策も始める。povo契約者がローソン来店時にスマホアプリを立ち上げると来店1回当たりデータ容量が無償で100メガバイト(メガは100万)回復する「povoデータオアシス」を年内に提供予定。月最大1ギガバイト(ギガは10億)回復できる。
2024年度中にはpovoのデータ容量をチャージできるeSIM(端末埋め込み型加入者識別モジュール)を全国のローソン店舗で販売する。ローソンへの来店機会をpovo契約者拡大のチャンスにし、主回線のデータ容量が満杯になったり主回線で障害が起きたりした際のサブ回線としてpovoを認知させる戦略だ。
高橋社長は8月に米西海岸にある複数の人工知能(AI)関連企業を訪れた際、「皆が口をそろえてローソンの名を出すくらい非常に関心が高かった」と明かす。小売業とITが融合した「リテールテック」の導入で米小売り大手ウォールマートなどが成果を出しているからだ。
KDDIは生成AI開発用の大規模計算基盤の整備で今後4年間で1000億円規模の投資を行う。この計算基盤とローソンの次世代発注システム「AI.CO(アイコ)」を融合し、販売数や会員制交流サイト(SNS)でのトレンドを分析してPontaパスで配布するクーポンを最適化する取り組みも始める。
「コンビニと通信の融合でできる新しい付加価値を顧客に適用し、コンビニに行けば何か面白いことがあるというものを実現する」(高橋社長)ための各種の取り組みが、KDDIのローソン経営参画の成否を分けることになる。