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雨どい・タンク・ろ過装置・簡易トイレ…雨水利用で生かす製造業の技術

雨どい・タンク・ろ過装置・簡易トイレ…雨水利用で生かす製造業の技術

タニタハウジングウェアの鎖とい

水害頻発の一方で渇水リスク

水害の頻発化や危機的な渇水リスクが高まっている。全国約300の地方公共団体では雨水タンクや雨水浸透ますの設置などの雨水利用に対して助成制度を設けており、雨水利用や減災に取り組む企業も増えている。(小西麗那)

雨どいを取り扱うタニタハウジングウェア(東京都板橋区)は1947年に創業。もともと伸銅業を生業(なりわい)としていたが、加工品を作り始めたことを契機に、銅製の雨どいを手がけるようになった。谷田泰社長は「天気が“良い”“悪い”と言うが、雨が悪いことをしているわけではない。降らなくなったら困る。雨は循環を支えている」とした上で、「雨どいの起源は奈良時代。屋根に降った雨を集めるために使われていたが、今では建物を守るために使われる」と話す。

雨水の管理は1000年以上の歴史があるわけで、災害の激甚化の中で重要性を増している。

「“ためとっと”は“ためてます”を意味する博多弁」。大建(福岡市早良区)の松尾憲親社長は、同社の雨水貯水地下タンクの名称の由来を説明する。この製品は2012年に九州大学と共同開発した。安全な水の安定供給を目的とした国連の人間居住計画(ハビタット)などからの施工依頼が多い。14年のラオスを皮切りにベトナム、ケニア、インドネシアなど設置場所も世界に広がる。同社では「ためとっと」を福岡市動植物園に寄贈するなど国内での普及にも積極的だ。

タンクは地面を掘削して保護シートおよび遮水シートを敷き、砕石を詰めて土をかぶせる仕組み。雨水は砕石の隙間にためる。砕石の間にすむ微生物の働きなどで水質向上につなげる。「11年の初施工時には、完成までに1カ月かかった。今では段取りよくすれば1週間くらいで施工できる」(松尾社長)という。

ハビタットなどからの新たな施工依頼も舞い込んでいる。「初めてラオスに行った時、2歳の誕生日を迎えられない子どもが多くいることに驚いた。若い人に現場を見てもらいたい。自分の仕事で誰かの命が助かることを肌身で感じてほしい」(同)と、“水”の安定供給に懸ける思いは熱い。

都市の地下に大規模貯留槽

ベルテクスコーポレーションは無動力雨水簡易ろ過装置「れいんクル」や雨水貯留槽式災害用トイレ「レスキュート」など雨水の活用に積極的。ただ、執行役員の三好祥太氏は「費用対効果や普及に向けた課題など、雨水の活用はなかなか難しい」と話す。

ベルテクスコーポレーションの「スパイラルホール」

同社は雨水浸水対策・下水道事業などのコンクリート事業や、パイル事業、防災事業などを手がける。18年までにプレキャストコンクリート(PCa)などを扱っていた同業4社が段階的に統合して誕生した。局所的集中豪雨が全国的に発生する中、浸水・洪水など自然災害の対策にも取り組む。「雨水貯留槽やマンホールなど、当社は水を扱うことが多い」(三好執行役員)という。

都市部では人口が集中し、災害リスクが増大している。同社の高落差対応組み立て式マンホール「スパイラルホール」は「落差が大きいところ、特に都市部」(同)で活用されている。水路と管理空間が一体構造のため、省スペース化にもつながり、「らせん階段状のため、落流水の騒音抑止や摩耗防止に役立つ。また、内部の階段を使って直接入坑が可能なためメンテナンスが容易」(三好執行役員)としている。

国土交通省の調査では、雨水の利用施設は全国で少なくとも4198施設(22年度末現在)。例えば東京スカイツリータウンは、地下には2635トンの雨水貯水槽(約60基)を持つ。このうち800トンは雨水貯留槽として屋上緑化散水などに使用する。残りの1835トンは雨水抑制槽として集中豪雨などが発生した際、周辺への流出調整の役割を担っている。

日刊工業新聞 2024年09月27日

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