ソフトバンクはPayPayポイント付与…国内通信、若年層の株主獲得へ
自社株分割 購入しやすく
国内通信大手が若年層に自社株式を購入してもらう取り組みを強化する。ソフトバンクは10月1日に自社株の10分割を実施。自社グループ共通ポイント「PayPay(ペイペイ)ポイント」を付与する株主優待制度を新設する。KDDIも2025年度に株主優待をてこ入れする。新たな少額投資非課税制度(NISA)で投資意欲が増した若年層に自社への愛着を深めてもらい、ポイントサービスなどの“経済圏”の強化につなげる。(編集委員・水嶋真人)
「(株式の購入に必要な額を)20―30代の単身世代が毎月貯蓄できる金額以内に収めるためだ」―。ソフトバンク総務本部の吉岡紋子副本部長は、自社株を10分割する理由をこう説明する。
金融広報中央委員会によると、21年の20代の単身世帯の月額平均貯蓄額は約3万7000円、30代は3万9000円。ソフトバンク株を20日の終値1981円で100株(1単元)購入する場合は約20万円かかり、5カ月分以上の貯蓄が必要になる。
だが、10分割した場合、100株を約2万円で購入できる。吉岡副本部長は「買ってみようと思った時に買える水準になる。若年層も、より投資しやすくなる」と強調する。
ソフトバンクは1年以上継続して100株以上を保有した株主を対象に、PayPayポイント1000円分を付与する株主優待も始める。同社が個人投資家向けに実施したアンケートで約半数の回答者が、ほしい株主優待として同ポイントを選んだためだ。
スマートフォン決済「PayPay」の登録ユーザー数は6500万人を超え、PayPayポイントはソフトバンクの経済圏の軸に育った。吉岡副本部長は同ポイントについて「PayPayアプリケーションを通じてさまざまなサービスを使ってもらう入り口となる。経済圏の活性化と当社グループ企業への理解という両立ができる」と期待する。配当金とPayPayポイントの優待を合計した実質利回りは9%を超える見込みだ。
ソフトバンクによると、同社株の所有者別割合で国内個人投資家の比率は24年3月時点で20・3%と、21年3月比2・4ポイント減少。1単元以上を持つ個人株主数も同6万人減の78万人と減少傾向にある。この個人投資家の年代別割合では60代以上が55%を占める一方、30代以下は13%にとどまっていた。一連の施策で「30年をめどに30代以下の割合を人口構成比と同等の3割にする」(吉岡副本部長)目標を掲げる。
国内通信大手ではNTTが23年7月に株式の25分割を実施。同社の株式を1万円台で購入可能になったこともあり、株主数が22年度比約106万人増の約178万人と、国内最多となった。NTT株100株以上を2年以上3年未満保有した株主にはNTTドコモが展開するポイントサービス「dポイント」を1500ポイント、同5年以上6年未満の株主には3000ポイントを付与する株主優待も設け、若年層が株主になるきっかけとなった。
KDDIも25年度に株主優待を従来のカタログギフトから「Pontaポイント」や総合電子商取引(EC)サイト「au Payマーケット」、宿泊予約サイト「Relux(リラックス)」など複数の自社グループ提供サービスから選択する方式に変更する。将来の日本経済をけん引する若年層の囲い込みに向け、株主獲得でも通信大手が火花を散らすことになりそうだ。