「飲む体温計」量産技術、樹研工業が完成させた意義
深部測定、疾病リスク確認
樹研工業(愛知県豊橋市、松浦直樹社長)は、芝浦工業大学の吉田慎哉准教授らが開発を進めている「飲む体温計」の「サーモピル」をインサート成形で封止する量産技術を完成した。射出成形時に電子回路を破壊せずに、寸法精度に誤差がある基板を安定させて消化液などの吸入を防ぐ。今後、医療器具のほか各種産業分野への応用を目指す。
樹研工業が完成したのは、胃酸発電型飲み込み体温計を縦13・5ミリ×幅7・6ミリ×高さ6ミリメートル程度の固形物に成形、封止するもの。発電デバイスの電極部を露出させつつ密閉性を維持する。基板の厚さは製品によって最大0・1ミリメートルのバラつきがあるが、同社独自の成形技術によって内部で安定して保持することができた。
「飲む体温計」は体内の体温(深部体温)を測定することで、疾病リスクを確認でき、病気の早期診断、健康増進につなげることが期待されている。体の表面の温度を測る通常の体温計よりも精度が高い一方、腸壁を傷つける恐れがあるとともに、安定した封止技術が課題とされてきた。
同社は歯車部品などに利用してきた射出成形のインサート技術を応用し、生体適合樹脂による2ショットによる成形法を確立。1ショット目で電子部品を安定させるために保持するピラー成形をしつつ、2ショット目にピラーを外しながら完全封止を実現する。
吉田准教授は「電極が露出していても封止することができ、医療機器の前提となる品質の安定性も十分」と評価。一方、松浦社長は「寸法にバラつきがある基板でも安定して封止できる技術なので、さまざまな分野に応用できる」と話し、用途拡大に期待を寄せている。
同社は27、28日に福島県郡山市で開催する医療機器設計・製造展示会「メディカルクリエーションふくしま2024」に出展し、同技術を紹介する。