コメ不足よりコスト高、製品値上げやむなく…新潟の食品加工メーカーの今
日本有数の米どころ、新潟県でコメの収穫がピークを迎えている。各地のスーパーマーケットなどでは、いまだコメの不足感が漂う一方、県内のコメを主原料とする食品加工メーカーでは調達に混乱は生じていない。ただ、コスト上昇によるコメの値上がりが製品価格にも影響を与え始めている。(新潟・田中薫)
コメ不足は多数の要因が重なって生じた。2023年夏の酷暑により、新潟県の水稲作況指数は鳥取県に並び全国最低の95。24年6月末時点の主食用米の民間在庫量は前年同月末比約2割減の156万トンだった。しかし、業界内ではこの数字に対し「極端に少ないわけではない」との見方が大勢だった。
初期に小売店から姿を消したコメは、市場の余剰分を安く仕入れ低価格で販売していたものが多い。不作により余剰分が減ったことに加えて、不足への不安感や活発化した地震への備えのための買いだめが重なり、コメの不足感が生じたとみられる。
一方で、長期的な売買契約が結ばれたコメが不足するほどの不作ではなかった。販売計画・生産計画に基づき農家や農業協同組合(JA)、団体と長期契約を結んでいたコメ問屋や食品加工メーカー、飲食チェーンでは、安定した調達が行われた。
国産米を用いた米菓を製造する岩塚製菓は「JAなど団体を通じてコメ農家さんと収量や金額などを契約し作ってもらっている。24年度の契約はすでに終わっていて大きな影響はない」という。また、「(精米の)代替品としてパックごはん、包装もちの販売が伸長」(サトウ食品)した企業もあった。
店頭には新米が並びはじめ、混乱は沈静化しつつある。しかし、コメの価格上昇の影響は今後も続くと予想される。農林水産省が発表した23年産米の相対取引価格の24年8月分全銘柄平均価格は、玄米60キログラム当たり前年同月比17・1%増の1万6133円。輸送費やエネルギー価格、人件費などの上昇はコメ農家にも影響を与えている。
サトウ食品はコスト増を理由に12月2日出荷分からパックごはん「サトウのごはん」を11―14%値上げすると発表。1年6カ月ぶり4度目の値上げとなる。また25年4月期の通期業績予想では、増収も各利益項目で減益の見通しと発表した。使用するコメの種類は異なるものの、米菓業界も「新米の価格が高止まりするなら、25年収穫される(加工用)コメの契約価格や量に影響があると思う」(岩塚製菓)と不安視している。
価格上昇への懸念に対し、新潟県の花角英世知事は「生産者にとっては非常に励みになる米価になってきたのでは」との見方を示す。製造業や建設業、運輸業などと同様に、食品業界やコメ農家でも原燃料高やインフレによるコスト増が発生している。目先の需給だけではなく、本質的な適正価格についての議論も求められる。