中国、プラスチック原料輸出国に変貌か…想定外の早さ供給過剰に
不況下でもプラント新増設続く 世界的な設備余剰に拍車も
中国がプラスチックの“輸出国”に本格的に変貌する歴史的な節目となるのか―。中国の貿易統計を日本プラスチック工業連盟(プラ工連)がまとめたところ、ポリエチレン(PE)などの純原材料の輸出量が6月に輸入量を初めて上回った。背景には中国内の経済状況や需要に比べ、化学品の基礎原料となるエチレンプラントなどの新増設が続く供給過剰もある。グローバルにどう影響が広がるのか。予断を許さない。(山岸渉)
純原材料はPEやポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などの汎用品から高級品までを対象とする。中国の貿易統計によると、6月の純原材料の輸出量が222万9000トンとなり、同月の輸入量222万6000トンを初めて上回った。プラ工連の清水浩専務理事は「逆転するのはもう少し先かと思っていた」と驚きを隠さない。
中国の2024年上半期(1―6月)のプラスチック純原材料の輸出量は、前年同期比25%増の1266万8000トンと伸びた。3月には過去最高となる250万5000トンを記録している。累計の実績でも輸入量との差を縮めてきている。
背景には、中国の需給ギャップの状況がある。中国の経済成長が想定に比べて弱い中で、プラント新増設の動きが続く。中国に進出する日系企業などで構成する中国日本商会の「中国経済と日本企業2024年白書」によると中国の化学品について、内需は若干回復したが、市況は弱い状態から回復していないとみる。一方、同白書によるとエチレンの生産能力は22年に4675万トンに達し、世界最大の生産国となった。25年末には6600万トンになると推測される。そのため、エチレンから作られるプラスチックも他国に流れやすくなっている状況のようだ。
中国のプラスチック純原材料の輸出国を国別でみると、インドが1位で同24%増の151万4000トン、2位がベトナムで同62%増の111万4000トンと大幅に増えた。一方で、プラ工連の永野伸一事務局長は「中国の輸出先の国が(プラントの)新設や増設をしている」と指摘する。例えば、韓国は24年のエチレン生産能力は1295万トンを見込み、26年には約1500万トンに増強される見通しだ。
韓国だけでなく「世界で大きな余剰設備になるのは間違いない」(永野事務局長)とみる。また米中対立も貿易に影響する可能性があるとみられ、供給過剰の影響を注視する必要性が高まっている。