再生アルミ材量産化の核…UACJ・東工大が開発、「鋳造実験機」の性能
高速ロール鋳造で実験機 原料不純物の許容量拡大
UACJと東京工業大学は、低品位のくずから高品位の製品への「アップグレードリサイクル」を遂げたアルミニウム製品の量産化の核となる鋳造実験機を開発した。缶や自動車に用いられるアルミ展伸材は不純物の混入で材料の特性が低下するため、原料にリサイクル材を用いるには課題があった。今回開発した技術の活用で不純物の許容量を増やし、需要拡大が見込まれる再生展伸材の拡大につなげる構えだ。(名古屋・狐塚真子)
開発したのは、縦型高速双ロール鋳造機。横に並べた一対の水冷ロールの上から溶けた液体状のアルミを注ぐことで薄板を製造する。溶湯プールにたまったアルミ溶湯の重さでロールとの密着性を高めるほか、熱伝導性の高い銅製ロールの採用などで、従来方法と比べると冷却速度と鋳造速度を数十倍高められる。これにより、アルミ溶湯に混入した不純物による晶出物の微細化・分散化が可能になり、展伸材の製造に多くのリサイクル材の活用が見込める。
また、アルミの溶解後にスラブを鋳造し、熱間圧延を経て薄板を製造する従来方法では大きく六つの工程が必要だった。縦型高速双ロール鋳造では溶解と鋳造の2工程で済み、費用や製造に必要なエネルギーも約20%削減できる見通しだ。
実験機の投資額は約3億円で、UACJのR&Dセンター(名古屋市港区)に設置する。同技術開発は2025年度までの新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業に採択されており、9月中の本格稼働後、長時間安定した鋳造技術の確立を図る方針だ。
実験機では200キログラムのアルミ溶湯を用いて、幅200ミリメートルの薄板を数分間で鋳造できる。30年以降には量産化にこぎつけ、幅2000ミリメートル、年間約20万トンの生産を目指す。UACJのR&Dセンター基盤研究部の戸次洋一郎上席主幹は「再生展伸材は自動車メーカーのほか広い分野へ展開し、技術も広く公開したい」と話す。
カーボンニュートラル(温室効果ガス〈GHG〉排出量実質ゼロ)に貢献する素材として活用が進むアルミは、再生地金を用いた場合、新地金の使用時と比べ製造時の二酸化炭素(CO2)を97%削減できる。他方、日本では新地金の全てを輸入しており、国内のスクラップの有効活用が重視されている。同技術の確立により、新地金輸入量の削減や、アルミを用いる産業全体の国際競争力強化にもつなげられるかが試されている。