ニュースイッチ

グローバルサウス人材呼び込む機会に…文部科学省、研究・教育で連携強化

地球規模の課題解決

文部科学省はグローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)との連携を強化する。研究面ではインドの大学院生300人が日本で研究する仕組みを整える。教育面ではアフリカや中南米などの大学間で単位の相互認定などの仕組みを整える。アカデミアでは中国やグローバルサウスの成長が目覚ましい。多極化の時代に対応するため人的基盤を作る。産業界としては国内大学と連携しグローバルサウスの人材を呼び込む機会となる。(小寺貴之)

インドのトップ大学から300人規模の大学院生や若手研究者を迎える。生活費や受け入れ機関の活動費として1人340万円を支援する。日印で共同研究を立ち上げ、日印の研究者が大学院生を共同で指導する。科学技術・学術政策局が新規事業として10億円を2025年度予算の概算要求に計上した。

インドからITや数学分野の秀才を招き、日本が強みとする生命科学や物質科学などの研究者と連携すると日印での相乗効果が見込める。日本側が産学連携で研究テーマとインターンなどの機会を提供できれば留学生にとって利点が大きい。卒業後の日本企業やアカデミアへの就職を促すために、大学はキャリアパス支援を担う。この支援計画を文科省は大学から募るため準備が重要になる。

高等教育局はグローバルサウスと日本の大学を学生が行き来しながら学べる仕組みを整える。まずは大学間の単位相互認定から始め、将来は両大学から二つの学位を授与する体制を目指す。アフリカや中南米、南アジアなどを対象に1件2500万―4000万円を支援し、20件程度を採択する。新事業として5億円を計上した。

従来は欧米で最先端の研究を学ぶ国際連携が中心だった。現在はグローバルサウスの国々が台頭し、トップ大学は日本の水準を超えるまでになった。その上でグローバルサウスに身を置くと、数多ある社会課題に直に触れながら解決策を試す経験ができる。

日本には欧米で学んだ専門家は多くいるものの、途上国の限られたリソースで社会課題と格闘してきた高度人材が不足している。グローバルサウスと連携して地球規模課題に取り組むため、産学官でこうした人材が求められていた。

日刊工業新聞 2024年09月02日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
24年度予算ではASEANを押していたため、グローバルサウスを押すのは25年度予算が初になるそうです。これまで科学技術外交といっても先進国へはキャッチアップ、途上国とはお付き合い、外交らしい外交なんてしてこなかったと内部でもいわれています。それでも、この3年は科学技術外交の立て直しをはかっていて予算は付いてきました。新しい研究者像が求められています。日本には米国や欧州から学んできた研究者はたくさんいるけど、グローバルサウスの限られたリソースで動くソリューションを開発してきた研究者は少ないです。複合的危機は技術だけで解ける問題なんてほとんどなくて、技術と社会の総合格闘技のような力が求められます。ITと法、化学と経済政策など、複数の学位を持っていれば強みになります。ロールモデルもレールもない領域に挑戦する研究者が求められています。

編集部のおすすめ