ホンダとの関係は?…GM・現代自動車が戦略分野で検討、協業の行方
車両・クリーンエネなど幅広く
米ゼネラル・モーターズ(GM)と韓国・現代自動車(ヒョンデ自動車)が車両やクリーンエネルギー技術など戦略分野で協業を検討する。販売規模は両社グループ合算で年間1300万台を超え、内容次第で大きなスケールメリットを享受できる。強みも異なり、シナジーが期待できる米韓連合。中国・比亜迪(BYD)や米テスラなど電気自動車(EV)の新興勢力が台頭する中、日本や欧州の自動車メーカーにとっても新たな脅威になる可能性がある。(編集委員・村上毅)
「両社の規模と創造性で競争力のある車両を迅速かつ効率的に顧客に提供する」(GMのメアリー・バーラ会長兼最高経営責任者〈CEO〉)、「専門知識と革新的な技術を組み合わせることでコスト効率を高め強力な顧客価値を提供する」(現代自グループの鄭義宣会長)。両社首脳は協業についてこう意気込む。
協業のテーマは乗用車・商用車、内燃機関、クリーンエネルギー、電気、水素技術の共同開発・生産と幅広くバッテリー原料や鉄鋼などの共同調達も含む。規模と強みを補完してコストを削減し幅広い車両と技術を迅速に顧客に提供していく。
GMはこれまでスズキやいすゞ自動車、ホンダと他社との協業に積極的だった一方、現代自は韓国・起亜自動車を傘下に収めた以外に目立った協業策を打ち出していない。北米市場でいえばGMはピックアップトラックで圧倒的な地位を占めるが、セダンやハッチバックなどで競争力に劣る。豊富な商品構成を持つ現代自とは補完関係が成り立つ。
近年、躍進を続ける現代自はGMにとって魅力的なパートナーだ。現代自グループの23年の米国販売台数は前年比12・1%増の約165万2800台でGM、トヨタ、フォードに次ぐ4位。世界販売でも23年にグループで約730万4000台とトヨタグループ、独フォルクスワーゲン(VW)グループに次ぎ「グローバルビック3」の地位を確保している。
24年1月に米ラスベガスで開催された家電・IT見本市「CES」では燃料電池車(FCV)をはじめとする水素燃料電池(FC)技術を紹介し、傘下の起亜が新しいEVを披露した。北米市場に攻勢をかける取り組みの一環で、GMとの協業はインフラ活用などの補完だけでなく、GMを通じた米国政府への働きかけなど「ルールメーク」という点でも優位に働く。米国市場での主要メーカーという地位は盤石となり、同様に米国を成長市場と位置付ける日系メーカーにとっては脅威だ。
懸念されるのはホンダとGMの関係だ。両社は13年にFCシステムの開発で提携して以来、関係を強化。だが量販価格帯EVの共同開発は中止となり、26年に開始を計画する自動運転タクシーサービスもGMが自動運転専用車「クルーズ・オリジン」の開発凍結で計画が頓挫した。GMは現代自と、ホンダは日産自動車・三菱自動車と関係を深めており「ホンダとGMの協業は限定的となるのではないか」(東海東京インテリジェンス・ラボの杉浦誠司シニアアナリスト)との見方が強い。
競争の激化で自動車各社が苦戦を強いられている。VWはコスト削減のためドイツ国内工場閉鎖を検討し、欧米ステランティスは「フィアット」ブランドの小型EVの生産を一時停止する。先進メーカー・新興メーカーも含めた協業戦略が今後の成長のカギを握る。
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