トヨタ「レクサス」など採用…アドヴィックスの「次世代ブレーキ」が提供する高付加価値
電費性能、環境対応、安全快適―。さまざまな面からクルマの価値向上に寄与する次世代ブレーキの開発が進んでいる。アイシングループのアドヴィックス(愛知県刈谷市、秋山晃社長)は、運転姿勢を安定化させる前後ブレーキの独立制御や、環境規制のニーズに対応するディスクブレーキを開発。「止める」にとどまらない高付加価値を提供する。(名古屋・増田晴香)
電動車の普及に伴い燃費や電費性能を向上する回生協調ブレーキの採用が拡大している。減速時に車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する上で、いかに効率良くエネルギーを回収できるかが課題だ。
アドヴィックスは前後輪ブレーキの独立制御によって効率を改善。従来は4輪で油圧ブレーキを同圧で制御していたが、前輪と後輪でそれぞれ回生と油圧の割合を調整する。結果的に回生ブレーキの使用頻度が増え、燃費・電費効率の向上につながる。
独立制御のメリットはそれだけではない。停止する時に前後のブレーキ力を細かく配分することで、ブレーキをかけたときに車両前方が沈み込む“カックンブレーキ”の不快感をなくす。滑らかなブレーキで車両姿勢を最適化し、快適な走行を実現する。既にトヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」のミニバン「レクサスLM」などに採用されている。
環境への配慮も強化している。開発中のディスクブレーキ「サステナファウンデーションブレーキ」は高寿命パッドの採用により軽量化を達成。またパッドがローターに常時接触して生じる「引きずり」を抑え、走行抵抗を42%低減した。
最上位モデルは部品のアルミニウム化でさらに軽量化を図る。欧州委員会が提案する新環境規制「ユーロ7」はブレーキも対象。アドヴィックスの藤山征人執行幹部は「ユーロ7のブレーキ粉塵低減も織り込んだ製品として投入する」と話す。
将来は現在の油圧から電気信号で制御する「電動ディスクブレーキ」の採用を狙う。開発中のブレーキでは前輪は油圧式を踏襲し、後輪を電動式にした。フロントは分離式ユニットとし、リアは油圧配管が不要になる。これによりフードを低くしたり車内を広くしたりすることが可能。藤山執行幹部は「電気自動車(EV)で要望の多い、パッケージの自由度向上に貢献できる」とアピールする。
クルマの電動化・知能化に伴い、ブレーキの役割はさらに広がる。自動車メーカーと密に連携し、次世代車のニーズに応える。
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