データセンター間接続コスト半減…NTT「IOWN」活用サービスが活発化してきた
NTTの次世代光通信基盤「IOWN(アイオン)」を用いたサービス提供が活発化してきた。8月末に日本と台湾間でIOWNを活用した国際通信網の開通を発表。4日には通信速度が毎秒400ギガビット(ギガは10億)の高速データセンター(DC)間接続で構築運用コストを半減、電力消費量を40%削減できるシステムの提供を始めた。人工知能(AI)の普及に伴う通信の高速化やデータ量の増加に対応した各種サービスの普及でIOWNの国際標準化を目指す。(編集委員・水嶋真人)
新システム「IOWNネットワークソリューション」は、毎秒400ギガビットの高速通信に対応した長距離伝送可能な中継装置(スイッチ/ルーター)を用いる。同装置はソフトウエアとハードウエアが分離したホワイトボックスとし、ネットワークOS(基本ソフト)とホワイトボックス装置、電気信号と光信号を相互変換する光トランシーバーで構成する。
毎秒400ギガビットのデータ伝送速度で80キロメートル超の長距離伝送に対応した技術「400GZR/ZR+」に準拠したDC間接続が可能。オープン仕様にも準拠しており、複数のホワイトボックス装置、光トランシーバーの中から顧客の要望に応じた最適な組み合わせを選べる。NTT技術企画部門の島津義嗣統括部長は「従来は限定されていた組み合わせをオープン仕様にしたことで環境や用途に応じた柔軟な組み合わせを実現し、コストを最適化できる」と説明する。
光トランシーバーにはIOWN技術を用いた光電融合デバイスを採用した。これにより長距離伝送に必要なトランスポンダー(電波中継器)機能をスイッチ/ルーターに集約。トランスポンダーが不要となり「機器コストや電力消費の削減、省スペース化、構築期間の短縮を実現する」(島津統括部長)。
販売はNTTアドバンステクノロジ(NTT―AT)とACCESS子会社のIPインフュージョンが担う。ホワイトボックス装置はエッジコアとUfiスペース、光トランシーバーは富士通オプティカルコンポーネンツとNECが提供する。
低炭素社会戦略センターによると、世界のDCのデータ量は2030年に18年比約16倍の170ゼタバイト(ゼタは10の21乗)、消費電力は同約13倍の2600テラワット時(テラは1兆)に達する見込み。1カ所のDCでは処理できない状況時に複数のDCを接続してデータ処理を行う分散型DCの普及が見込める。
このDC間接続で今回の新システムの普及を目指す。IOWNの構成要素でネットワークから端末までを光で結ぶ低遅延通信技術「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」網を用いたDC間接続の高度化も推進し、IOWNの存在感を高める。