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SDGsで優れた事例も…約30年の歴史、山口大の「おもプロ」って何だ?

SDGsで優れた事例も…約30年の歴史、山口大の「おもプロ」って何だ?

野良猫の餌やりの場所を決め、掃除など管理をして共生を図っている

山口大学が支援する学生活動の「おもしろプロジェクト」(通称・おもプロ)は約30年の歴史がある。昨今は持続可能な開発目標(SDGs)の観点で優れた事例も出ている。

特に動物関連は、鹿児島大学と共同の教育課程「共同獣医学部」を持つ山口大らしい案件だ。その一つ「山口大学野良猫0プロジェクト~山大にゃんこ大作戦~」は、平均寿命5年の野良猫を減らし、同15年の飼い猫のみに―という長期戦略だ。ポイントは「かわいい」「餌をあげたい」の愛玩・愛護でなく、野良猫の繁殖を抑える福祉・共生の視点だ。

除草で活躍してもらうヤギのハーネスを調整する

野良猫は1匹から1年後で20匹に、という試算もあるほどの繁殖力だ。メーンの吉田キャンパス(山口市)ではかつて近隣住民の餌付けなども多く、一時期は60匹以上の野良猫が生息。そのため食べ残しの放置やふん尿、発情期の鳴き声など苦情が出ていた。

野良猫0のプロジェクトでは、世界的に定番化しつつある捕獲し(T)、不妊・去勢手術をし(N)、自然に戻す(R)「TNR活動」を展開した。手術は1匹2万円かかる。「クラウドファンディングが力になった」とリーダーの前原光主穂さんは強調する。ボランティア団体と連携し、一般家庭への譲渡も実施。キャンパス内での給餌と排せつ物の掃除による管理も手がけている。

もう一つは「ヤギ草プロジェクト~草をたくさん調べ隊~」。共同獣医学部のヤギ飼育では乾燥させた草を餌にしている。これに対してキャンパス内の雑草を食べてもらい、除草剤や刈り取りとは違う除草を手がける。

調査活動を経て「実施は本年度から」(リーダーの西田照さん)。行動範囲を囲う柵を「おもプロ」予算で購入し、除草用ヤギを貸し出す会社を見学。学内の農場管理者にも意見を聞いて進めている。

学生支援センターの竹松葉子センター長は「獣医師の教員をはじめ、さまざまな専門家の助言や支援が得られるのは、総合大学ならではの強み」と胸を張っている。

日刊工業新聞 2024年09月03日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
「野良猫に餌をやることに問題がある」なんて、知りませんでした。一時的な優しさが、飼い猫より格段に寿命の短い野良猫が生まれ続くよう、助長しているなんて…。野良猫を持続的に適切に助けていくには、一匹2万円の用意がいるということにも、考えさせられました。正直、「SDGs活動には当たり前の案件も散見される」と思っていましたが、今回は自身の無知を大いに反省しました。

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